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苦笑いで店主が指したカウンターの奥では、食器が山積みになっている。
「それでいいんですか、本当に?」
それでいいなら願ったり叶ったりのはずなのに、どことなく残念に思っているのはなんでだろう?
「ああ。
ひとりでやってるから手が回らなくてね。
やってくれると助かる」
俺を安心させるように、店主はにっこりと笑った。
「じゃあ……」
とりあえず、無銭飲食はこれで許してくれそうだと安心した。
ジャケットを脱いでカウンター席の椅子にかけ、ワイシャツの袖を捲る。
「これ、使って」
店主が渡してくれたエプロンをさらに着け、シンクの前に立つ。
食器はシンクから溢れんばかりになっていた。
俺が皿を洗っているあいだに店主は表の看板を片付け、店じまいをしたようだ。
だから俺に皿洗いなど頼んだのかもしれない。
中に戻ってきた店主は今度、売り上げの計算をしている。
昔ながらの小さなレジ、さらに電卓片手に計算しているし、こんなところでは確かに現金のみだろう。
「こんな時間に帰れるなんて、よっぽどいい会社に勤めてるんだね」
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