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「罠に掛かった可哀想な小鹿ちゃん」
「怖がらないで」
「あなたの事は私達がちゃんと料理してあげるから」
そう言って
優しそうな顔をした親子は
何の躊躇いも無くその小鹿を解体する
その一方で
或る場所では沢山の鹿が
観光客から餌を貰って当たり前のように生きている
ステーキにされるカンガルーもいれば
手厚く保護されて また森に帰されるカンガルーもいる
同じ種族なのに
同じ”肉”なのに
何故こうも運命は違ってしまうのか
殺されて食われる者と
大切に育てられる者と
その差は一体何なのか
違いなど何も無い
あるのはその時の人間の気紛れだ
遭遇した人間がその時腹を空かせているか否か
その動物が
その時人間にとって害獣となるか 金に変わる珍獣となるか
或いは
保護すべき絶滅危惧種となるか 飼い慣らされた愛玩動物となるか
全ては人間の
単なる気紛れによって
運命はこうも変えられてしまうのだ
そうして私は
突然目の前に現れた人間に
畏怖の念を抱き乍ら問い掛ける
「あなたにとって私は害獣ですか?」と
私にとっては目の前にいる人間が
それこそが
怖ろしい獣なのに
私に好奇の目を向ける人間に
自分がどう映っているのかを必死で探る
全てはその時の人間の気紛れで決まってしまう
私の運命は
その手中に握られている
人間とは
かくも怖ろしい生き物
この世で一番
遭遇してはならない
忌避すべき罪な生き物
(2020年6月24日作の詩)
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