橋渡し人(びと)

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 二十六聖人の殉教の旅の際、初代唐津藩主寺沢志摩守広高(てらさわ しまのかみ ひろたか)が朝鮮出兵で駆り出され留守だったため、広高の弟で名護屋奉行であった寺沢半三郎(てらさわはんざぶろう)が唐津山本村に着いた殉教者を引き受け、殉教する長崎の西坂の丘まで彼らを連れて行き、そこで死刑を執行する責任者であった。  唐津から長崎までの最後の五日間を護送にあたったが、彼らを引き受けた際どのような人物がいたか知らされていなかった。そこで半三郎が殉教者を目にした時に信じられない人物がいた。  パウロ三木……彼は半三郎が少年時代親交があり兄のように慕った人物である。  宏樹はきっと半三郎は幼き日に兄と慕った人物を何の言われもないことで、ただ異教徒ということで死刑にしょさねばならないことにきっと神を恨んだのではないだうか。それも責任者としてその立場にいたことも。  展示されている文章を読み終え、宏樹は二人が何を思い何を語ったか……二人の間の葛藤はいかなるものだったか想像だに出来なかった。
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