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電車通りをしばらく歩いているとある程度大きな脇道があった。宏樹は何も考えずふらっとその脇道に入った。単純に近道になるかもと思った程度だ。そのまま進むと何故か懐かしい空気に包まれた。と同時に涙が出そうになった。
「なんだ? この気持ちは……あっ! ここは……」
小六の修学旅行の時に訪れた場所だった。
──日本二十六聖人記念碑 昇天の祈り──
長崎市の西坂公園にあるこの二十六体の像は一五九七年、安土・桃山時代の豊臣秀吉によりに二十六名のキリシタンが磔にされた、日本で最初のキリスト教徒への大規模な迫害されてから百年目に列聖を記念して建造されたものだ。
暫く宏樹は二十六体の像の前から動けずにいた。
「なぜ俺はここから動けないのだろう……」
やっとその場を離れることが出来たのは三十分後だった。
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