ジャイアンが来ませんように

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ジャイアンが来ませんように

 スタート地点に人が集まってきたので、飲み会を終えて外に出る。  イギーさんが離れてサックスパートの中に紛れてしまうと、急に不安になってきた。  どうか、ジャイアンが来ませんように……  私は心の中の、丸くて青くて猫型の何かにすがる。  カウントがあり、曲が始まる。  おお! なんとキレイに、吹けるではないか?  「♪パッパラッパー、パッパラッパー♫」  遮二無二吹きまくる私は、往年の金賞男。  今なら、全国大会優勝できるのではないかしら?  さらにチョーシこいた私は、応援に来てくれた常連たちの前を、京都橘高校吹奏楽部のステップを真似て通り過ぎる。  あとから聞いた話だと、酔っぱらいがクラリネットを千鳥足で吹いているようにしか見えなかったらしい。  しかし、良いのだ。誰が見ていても、見ていなくとも、音楽は楽しい。    そして、下北沢の笛吹き男は、パレードの後ろをついてくる子どもたちを従えて、下北の街はずれまで歩いていった。 (了)
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