ハーメルンのホラ吹き

1/1

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

ハーメルンのホラ吹き

 むかし昔、下北沢というの街に、オッチョコチョイなおじさんがクラリネットを持って現れました。  音楽好きの常連が多い私の店では、いつも自分の音楽論を披露しながらマウント合戦。 「日本一のギタリストは布袋だ!」「いやいや、お前はCHARを聞いたことがないのか?」「やっぱり稲葉さんが……」  こんな取るに足らない酒飲み話で、明け暮れている。  その日の話題は、吹奏楽。  常連の一人が「学生時代ブラバンに入っていて、マイナー楽器のユーフォ吹いていたんだけど、今はアニメ人気で自慢できるようになったな~」を皮切りに、出てくる出てくる、元ブラバン少年少女の多いこと。 「地方のお祭りに招待されて吹きに行った」「地区大会で、予選突破には絡まなかったが金賞を取った」「県大会突破して、地区大会まで行った」  いつものマウント合戦に熱が入る。  私は作り終わった料理を運びながら、そのマウント合戦に参加した。 「昔、普門館のステージに立って金賞をもらった」  普門館とは、2011年まで全国吹奏楽コンクールの会場として、当時のブラバン少年少女の『甲子園』であった。  都大会の予選は普門館で行われていたことを隠して、常連たちに自慢。  狙い通り、みんなの視線が集まる。 「俺、高校のとき甲子園の応援席で、トロンボーン吹いたことがある」に消されるまでは……  そんな常連たちのやり取りをニコニコしながら聞いていた、プロのサックス奏者・イギーさんが(実名)口を開いた。 「ほんなら、みんなで今度の下北沢音楽祭の吹奏楽パレード、でてみいへん?」  
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加