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オレの中学校生活を一言で表すと、『野球ゲームのみに没頭した三年間』だった。
正直なところ、それ以外の思い出は、まったくない。
林間学校も、合唱コンクールも、運動会も、文化祭も、修学旅行も、春休みも、冬休みも、夏休みさえ思い出がまったくない。
まだ中学を卒業して間もない四月であるというのに、この中学校生活の忘却っぷりを思うと、大人になった時には、もしかしたら中学校の名前すら思い出せなくなってしまうのではないか? などと思ってしまう。
それほどに、印象の薄い中学の三年間だった。
近場の高校に入学できる程度に勉強して、それ以外の時間はすべて野球ゲームに注ぎ込んだ三年間。
先程、林間学校や修学旅行を例にあげたが、大した思い出がないのも無理はないのだ。
何故なら、オレはこれらに参加していないから。
参加していないイベントに、思い出などあろうはずもない。
運動会や文化祭、合唱コンクールについては、欠席しなかったものの、それほど力を入れていた訳ではなかった。
運動会で自分のクラスが一位になった時も、合唱コンクールで自分のクラスが優勝した時も何の感慨も湧いてこなかった。
『みんな喜んでるなぁ~』とか『もうこれで、無駄な練習に付き合わなくてよくなるなぁ』とか、そんなことを思っていた。
我ながら、冷たい人間だなと思う。
卒業式の時も、別れを惜しむクラスメート達の咽び泣く声を聞きながら、『明日から一足早く春休みに突入だ。わーい』などと思いながら、涙を一滴も流すことなく一目散に学校を後にした。
仲の良かった生徒がいなかった訳ではない。
だが、卒業した学校に居残って、そいつらと涙を流し合う意味を見い出せなかったのだ。
むしろ、一刻も早く家に帰って、野球ゲームの練習をしたいとさえ思っていた。
本当に、オレは冷たい人間だ。
中学校卒業までに築き上げた性格が、こうなのだ。
きっと、オレは死ぬまでこういう人間なのだろう。
なぜなら、人間はそうそう変われるものではないからだ。
だから、これからはじまる高校生活の三年間も、同じように野球ゲームだけの日々で過ぎ去っていくのだろう。
三年後、恐らくオレは、咲き誇る桜の下から校舎を眺めながら、きっとこう振り返る。
『オレの高校生活を一言で表すと、野球ゲームのみに没頭した三年間だった』と。
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