【第三章】野球と恋、理想と現実

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☆ ☆ ☆  その日の放課後。  ゴリべー部部室にて。 「おっ、そうそう、そのアウトローは流す意識で打てば良いんだよ。瞳ちゃん、なかなか筋が良いなぁ」 「そう? えへへ、そんなことはじめて言われた。嬉しいなぁ」 「そうなんだ。ゴリべー部の奴らは厳しいんだなぁ、酷い奴らだ」 「そうそうっ! 酷いんだよ〜、住ちゃんなんて、私のこと『最雑魚ちゃん』呼ばわりするんだから! あれは絶対ろくな死に方しないね!」 「それは酷いなぁ」  …………かの川島鉄平が、ゴリべー部の部室にいた。  ソファーに二人仲良く並んで座って、ゴリべーをしている。  そんでもって仲良く話している。  何だこの展開?  そういえばこの前、川島とすれ違った時、この棟で会ったんだったっけか?  川島のやつ、最初からここへ来るつもりではあったんだな。 「いやぁ〜、瞳ちゃんとゴリべーするの楽しいなぁ〜。いっそのこと、オレもゴリべー部に入っちゃおうかなぁ〜」  ……は? 川島がとんでもないことを言い出した。  川島がゴリべー部に? こいつ野球部だろ? 「え〜、それはダメだよ。てっちゃん野球部でしょ? 一年生でレギュラーだって言ってたじゃん。将来有望なんだから、辞めたら勿体ないよ」  ホッ……徳川さんが断ってくれた。  良かった、何も考えず『入っちゃいなよ』とか言わないでくれて……。  それにしても『てっちゃん』か……。  デレデレし過ぎだろ、コイツら。  すると、徳川さんがオレの姿に気付いたようで。 「あっ、朝陽くん来てたんだ」  と、声を掛けてきた。  オレは返答する。 「今来たとこ……だけど、何で川島くんがいるんだ?」  一応、川島にも触れておくことにした。  おっと、川島もオレに気付いたようで睨んできたぞ? 怖い怖い。  徳川さんが答える。 「てっちゃんもゴリべー経験があるらしくてさ、教えて貰ってたの。凄いんだよ? てっちゃん教え方上手くてさぁ」 「……悪いな。オレの教え方が悪くて」 「あっ、いや、そういう意味じゃなくってね? え〜っと……」  おっと、少々棘のある言い方になってしまったか。  それにしても……。  何で少し、イラッとするのだろう?  モヤモヤする……何だ? この気持ちは。
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