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「そんじゃ、そろそろオレは野球部に戻るとするか。お邪魔虫も、やってきたことだし」と、川島がソファーから立ち上がった。
徳川さんが「お邪魔虫?」と首を傾げている。
鈍感だなぁ……この人。
すれ違いざま、徳川さんの肩に手を置き川島が話し掛けた。
「例の話……ちゃんと考えてくれよ」
「いや……それは……」
例の話……? 何の話だ?
「まぁ良いから良いから。ちゃんと考えといて。それじゃあ、また明日ね」
「て、てっちゃんってば! もうっ!」
そう言って、部室から出て行く川島。
すれ違いざまに、「フフン」と鼻で笑われた。
何だそれ、腹の立つ奴だな。
…………。
「随分と、川島と仲が良いみたいで何よりだよ」
「? てっちゃんは友達だからね」
「……そっか、友達か……」
ん? あれ? なんでオレ今、ホッとしたんだ?
するとここで――――
「やぁやぁ皆さん! やってますかな?」と住友先生が部室へ登場。
オレと徳川さんの微妙な空気感を察したのだろう。
交互に顔を見渡した後、「な、何かあったの?」と尋ねてきた。
オレは答える。
「……別に、特に何もありませんよ」
そう、何もない。
徳川さんが、どこの誰と付き合おうと勝手だ。
まったくもって……オレには関係のない話だ。
☆ ☆ ☆
それからというものの、川島はほぼ毎日、ゴリべー部の部室に顔を出してきた。
他人事とはいえ、本業の野球部の方は大丈夫なのか? と、心配になるほどに。
今も、オレがゴリべーの特訓をしている後ろでイチャついている。
訳の分からん状況だ。
「うわっ、このキッポーうまっ!!」
「でしょでしょ? それ、期間限定のやつ」
「そうなの? もったいねぇな。こんなに美味いんだから、一年中売れば良いのに」
「ふふふん、それはね? てっちゃん、販売戦略というものがあってですね」
「販売戦略? 何それ詳しく」
…………何の話してんだよ、コイツら……。
川島もくだらねぇ話するくらいなら、本業の方行けよ。
徳川さんも……ああ、腹が立つな。
ここは一言言っておくべきだろう。
「あのさ二人とも、どうでもいい話しに来てんなら帰ってくんねぇ? 正直、邪魔なんだけど」
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