【第三章】野球と恋、理想と現実

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 徳川さんは。 「あ、ごめんごめん」と謝ってくれたが。  川島は……。 「んだよ邪魔って、学校で話をして何が悪いんだよ。つーか邪魔って何だよ? ゴリべーなんて、たかがゲームだろ?」 「は?」  たかがゲーム……だと? 「なんだ? やんのか? お?」  川島が凄んでくる。  一色触発の空気、徳川さんが止めに入ってきた。 「や、やめなよ! 二人共っ! てっちゃん! それにしても今の言葉は駄目だよっ! 朝陽くんにとってゴリべーは……――」 「もういい」咄嗟にそんな言葉が口から出た。 「二人でイチャついていたいなら勝手にしろ。オレは帰る」 「朝陽くん! 待って!」  徳川さんの制止声に耳を傾けず、オレは部室から出て行った。  ゴリべーに集中出来ないのなら、あそこへ寄る意味なんて何一つないからだ。  どうぞご勝手に愛を育んでくださいな。 ☆ ☆ ☆ 「ちょっと待って、島内くん!」  昇降口のところで、手を掴まれ引き止められた。  石井さんだった。 「その様子……何かあった?」  その様子? 何のことだ? 「別に? オレはいつも通りだけど……?」 「何かあったのね。顔に書いてあるわ」  うそ、顔に? 油性マジックじゃなかろうな。  石井さんが、提案してくる。 「ちょっと待ってて、この書類を職員室へ届けたら、私ももう帰れるから。一緒に帰りましょう」 「お、おう……でも、石井さんの家って、オレんちとは逆方向だよな?」 「大丈夫。小腹が空いたからマックスバーガーへ寄りましょう。そしてハンバーガーを食べるの。それならまったくもって問題ないわ」  小腹……。  そうは言っても、この人めちゃくちゃ食べるんだよなぁ……この見た目で。  しかしまぁ、せっかくのお誘いだ、断る理由はないな。 「分かった」 「うん、じゃあこの書類、届けてくるから待っててね。あ、やっぱりここはマズいかも、先にマックスへ向かってて、後から自転車全速力で追い付くから」  マズい……?  まぁ、石井さんがそう言うのならそうなのだろう。 「了解、じゃあマックスで待ってるから」 「うん、まってて。それじゃあ後でね」  パタパタと小走りで、石井さんは職員室の方へと去って行った。  大変だなぁ……学級委員長も。  今度また、機会があれば手伝おうか。  とまぁ、そんな訳でオレは一足先にマックスバーガーへ向かうこととなった。
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