キツネは嫁入りしたくない

3/8
前へ
/8ページ
次へ
「ほら、このように」 女性が少し身体を横向きにしたら......。 着物から茶色い長い尻尾が出ていた。 「きききっ、キツネ!」 俺は持っていた缶ジュースを落としそうになった。 「あら、丁度良い物を、お持ちですね」 女性が立ち上がり、近づいてきた。 そして手に持っていた缶ジュースへと両手をかざした。 缶ジュースが虹色に輝いて、やがて消えた。 「え?ちょっと何したの?このメロンソーダのジュース、 すんげえ好きなんだよ、売られてる自販機がひとつしかなくて、 それで自転車を漕いでまで、買いに来たんだよ!」 「自転車?自転車があるのですか?」 「う、うん」 「一生のお願いです!借してください!ご恩は必ず返します!」 「いいけど、外に置いたし、雨ざらしだよ?乗ったら濡れるよ?」 「かまいません」 女性が裾を掴んで外へと飛び出した。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加