キツネは嫁入りしたくない

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「あ、ちょっと!まだ雨が降ってるのに!」 反射的に追いかけたが、玄関の軒下で立ち止まる。 激しい豪雨で、外に出るのはためらった。 それなのに女性は白無垢を濡らしながら、せかっく綺麗に結った 髪を乱しながら、化粧も落ちそうなのを気にせず、俺の自転車に 器用にまたがった。 「真太郎さーん!その缶ジュースに虹を閉じ込めましたーっ! 絶対に開けないでくださいねーっ!」 雨音にも負けずに女性が叫んだ。 「なんかよくわかんないけど、わかったーっ! それでーっ、どこ行くのーっ?」 「隣村まで逃げまーす!自転車はちゃんと、お返ししまーす!」 そうして彼女は白無垢姿で自転車を走らせ始めた。 水分で滑る草むらをフラフラと漕いで、一本道にでた途端に......。 俺の住んでる村とは反対方向へと、ものすごいスピードで走って 姿が見えなくなった。 隣村までは自転車で10分くらい。 そろそろ辿り着いただろうか?という頃に、雨が止んだ。
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