キツネは嫁入りしたくない

6/8
前へ
/8ページ
次へ
田畑に囲まれた狭い道でギュウギュウになって、みんな騒いでいる。 「おや、そこにいるのは秋口家の真太郎さんではないですか」 着物姿の男性に言われた。 俺の家って動物に有名なんだろうか。 「真太郎さん、このあたりで虹のカケラを見ませんでしたか? それを投げると虹の橋がかかるのです。 それを合図に婚礼が始まります。ですが、カケラは無いし、 嫁様も見当たりません。どうしたらいいのか......」 虹のカケラ?俺の持ってたメロンソーダの缶に何か入れていた。 きっとそれだ。 「どうと言われても、なんにも知りません」 婚礼を嫌がっていた花嫁のことを考えると、俺は花嫁に味方したくなった。 「あぁ、どうしよう、どうしよう」 そう口々に言って去っていく着物集団は次第に着物さえもなくなって キツネになって、踊るような足取りで林の向こうへと消え去っていった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加