キツネは嫁入りしたくない

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夏の気まぐれな通り雨がきた。 うそだろーっ!あんなに晴れていたのに、俺の日頃の行いのせいか? ちょっと自販機でジュースを買いたいと思い、自転車を走らせた。 そして買えたら水を捨てるような勢いになってきた。 なんだ、俺がほんとに悪いのか?高校受験を控えた戦士として 夏休みの踏ん張りが足りないのか?どういう試練だ! それともアレか、好きな女の子のことばかり考えてしまう、この 不誠実さのせいなのか!しかたないだろ!健全な15歳なめんな! 「ぶはっ!」 過疎化の進んだ村なんて住むに侘しいものだが、丁度いい空き家を 見つけて入り込めた。 トタン屋根があるせいで雨音がすさまじい。 とりあえず難を逃れたが、既にグチャグチャに濡れていて服が重い。 素足にスニーカーを履いてて水分を含んでいて気持ち悪い。 「はあっ、まいった、まいった、早く止めっつーの」 「止んでは困ります」 「は?」 ボロボロの平屋の一軒家。 その玄関の土間に座っていたら、後ろで声がした。 振り向くと玄関からすぐそばにある階段に、着物姿の女性が座っていた。 「なに?」 夏特有の浴衣とかではなく、髪を結い上げて白無垢......。 いわゆる花嫁衣裳だったのだ。
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