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第20話 有り得ない
沙奈ったら、なんでいきなり・・・。萌音は心にズシンと重い球を受けた気がした。沙奈も戸惑いながら教室を出て行って、萌音は職員室に行った蒼馬を待っている。
あーあ・・・。
沙奈は沙奈なりに翠の過去を重く受け止めていたから、きっとそのリカバリのつもりなんだろうな。稲垣君が文化祭以来、翠ちゃんのことを気にしているとは気づかなかったけど。
「お待たせー」
蒼馬が教室に戻って来た。
「帰ろうぜ。・・・ ん? どうした萌音?」
萌音は座ったまま蒼馬を見上げた。
「蒼馬、ちょっと聞いて」
「あ? なに?」
蒼馬は萌音の前の席の椅子に座る。
「あのね、ちょっとこじれてる気がするの。翠ちゃん」
「どういうこと?」
萌音は先ほど見た光景を簡単に話す。蒼馬は腕を組んだ。
「悪い話じゃないと思うけど。小川の言う通りだよ。秋丸さん、心が軽くなるんじゃない? 彼氏出来るとさ」
「そうなんだけど、その相手は稲垣君じゃないと思うのよ。翠ちゃん、好きな人がいるんじゃない?」
「えー、誰? 稲垣じゃなくて?」
萌音は蒼馬の目をじっと見た。
「うん。もしかして…だけど、當麻君」
蒼馬は目を丸くした。
「はぁ? 慧さん? あんなのの、どこがいいんだ? 地味だし、取柄なさそうだし、訓練でもリアルでも怪我の宝庫。1年の時から知ってるけど、あいつがモテたの見たことない。そりゃ男の目から見ても、稲垣でしょ」
萌音はちょっぴり自信を無くした。當麻君って、そんなに酷かったっけ?
「そんなことないと思うけど…」
萌音は自分の彼氏の見解に、黙り込んだ。
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