第5話 変人?

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第5話 変人?

 毎朝、電車であたしの背後に立つアイツ、どうやら同じ高校のようだ。ちらっと校章を確認すると同じ学年。クラスが違うので誰だかは判らない。彼女も一応認識はしている。  にしても、一言で言うと変人か? 車窓を眺めるあたしの後ろにピタッとくっついて、最初は痴漢とやらかと思ったよ。噂に聞いていた電車内の犯罪者。向こうでは電車に乗るなんて滅多になかったから、どういうものかは知らなかったけど、警戒してしまった。  しかし実態はそうではないようだ。アイツの視線はあたしを通り越して窓の外に注がれている。それで時々ブツブツ言うんだ。何かを数えていることもある。一度、窓から見える海に大きな鳥が飛んでいた時なんて、あたしの肩の上に顎を載せんばかりに接近して『うぉっ』とか唸ってた。初日にアイツがあたしを睨んだように感じたのは、恐らく、あたしが窓を遮ることになるからであろうと、今となっては思う。子どもかよ!     電車が結浜駅に近づき、車窓が都市の風景になって来ると、アイツは俯いて独り言を繰り返し、スマホを(いじ)っている。気持ち悪いったらありゃしない。あたしに被害はないから突き出すことは出来ないけど。  最初は乗る場所を変えようかとも思った。しかしここが便利だし、自分から退くのもちょっと悔しい。だから意地張って同じ場所に立ち続けている。キモイけど・・・。  あたしに少しでも手を出したら、後ろ蹴りでキ〇タマ蹴飛ばしてやる。ここの高校の制靴はスニーカーと違って底が硬いんだ。悶絶させてやるよ、イヒヒ。  異なる心象を乗せて、毎朝電車は規則正しく走り続けた。
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