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「え……と、電子マネー決済も対応してますけど……?」
助け舟を出してみるも、「チャージし忘れてた……」という絶望的な呻きが苦しそうな呼吸の隙間に聞こえてくる。
チャージするには店内にあるATMで操作する必要がある。でも、電子マネーのタイプによってはそれも対応しているコンビニとしていないコンビニがあるようで、二宮のはおそらくしていないタイプ。
二宮の下した決断は。
「やっぱこれやめとく」
真っ赤な顔で雑誌を諦める二宮。そうだよね、うん。それしかないもんね?
「早く、釣り」
逃げ出したいくらい恥ずかしいのか、小声で私を焦らせる二宮。私もちょっぴり同情しつつ、慌てて会計をやり直し、二宮にお釣りを手渡しする。
二宮はそれを受け取ると、いつもの悪態も吐かずに退散して行った。
耳まで赤くなってたな。
プライドの高い男だから、こういう些細なドジが一番キツイかも。
望んでいた天罰が下ってスカッとするつもりが、見てはいけないものを見てしまった気がして胸がザワザワする。
その時、私の背後でチンと音がした。
「あ! お弁当!」
これは私のミス。レンジの中から二宮のお弁当を出し忘れていた。これじゃ二宮はお金だけ出して手ぶらで行っちゃったことになる。
こんな恥ずかしい思いをした店に再び戻ってくるかな?
無理だよね。特に二宮みたいな男、並の神経じゃ耐えられない苦行だろう。
……さすがに可哀想。
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