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 気象庁の予報どおり、降りはじめるとなかなかやまない酸性雨は未明には完全にやみ、曇り空が重くのしかかっている。  夜勤や病人のいる家以外、強制的にテレビの電源が入り、NHK総合を見せられる。とはいっても四六時中NHK総合ではない。重要なニュース番組や政治番組が終わってからならNHK教育(Eテレ)でも民放チャンネルでも見てかまわない。むしろ、くだらないバラエティ番組や、小学生にも内容の通じる程度のドラマなど、視聴を国が推奨していた。  まだ、東京はなにごとも起きていない。  瓜生(うりゅう)(まこと)は妻の夏美が作ってぶら下げたてるてる坊主を見て、彼女の蜂起への想いを汲みとった。娘の澪がいなければ、夏美は蜂起に参加していただろう。瓜生家だけではなく、どこの家庭も結局、あいつぐ値上げのラッシュや社会公共サービスの低下を痛いほど感じている。その一方、通称上級国民は贅沢な生活を過ごしており、一般の民衆の怒りはこれ以上はない頂点を極めていた。  瓜生は、タイメックスのいかつい腕時計で時刻を確認し、ポートにUSBメモリを差し込むとパソコンを起動した。
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