III

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 五日前にこれも土岐(とき)から渡されたものだった。USBメモリのなかには通称イグジットというツールが入っている。  瓜生はUSBメモリのドライブをひらき、exit.exeをクリックする。たったのワンクリックでやるべきことは済んだ。  イグジットはまず発信源である瓜生の家に振り当てられたIPアドレスをまったく別のIPアドレスに偽装する。  夏美はパソコンのモニタに映るイグジットの処理を瓜生誠の横から見つめていた。  瓜生のIPアドレス偽装は念を入れて、ほかのサーバ……初期パスワードが変更されていないサーバのなかから発信されたと誤情報をばらまく。  そして、ホンジュラスやベトナム、スイスなどのサーバから目指すサーバへと攻撃を開始する。  瓜生が土岐からもらったイグジットには、第一攻撃目標に警視庁のサーバや連絡網をダウンさせる指向性がプリセットされていた。  案の定、すぐには攻撃できず、警視庁のサーバやネットワークは能動的サイバー防御を展開し、イグジットの発信源へ無効化を狙ってくる。  だが、イグジットの発信源はもう特定できない。その隙に、イグジットは膨大な負荷を警視庁の各サーバにかけ、ついにはダウンさせる。
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