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 酸性雨の水素イオン濃度指数(pH)はすでに5.0を切っており、日本本土だけでなく、隣国の産業推進政策による環境破壊、太平洋で続く火山噴火のガス流入などで、アジア方面では深刻な問題になっていた。  疫病や戦争の影響に加え、耐酸性のビニールハウスへの切り替えだけでも、農作物は高騰が続く。  瓜生も土岐も革命という語は使っていない、あくまでも蜂起であった。ただし、この計画に携わる者すべてが蜂起と呼んでいるのかはわからなかった。俗にいう右左の区別なしに、追いつめられた者の乾坤一擲(けんこんいってき)、武力による立ち上がりだった。 「それじゃ、また。きみの社内での躍進を祈ってるよ」  と瓜生はもともと土岐が持っていた紙袋を手に別れを告げた。 「お互いにな。また会おう、同期が元気だとうれしいよ」と、土岐。  もちろんあいさつは監視カメラやAI対策で、前もって決められたものだった。  紙袋は東京名物のお菓子で、もちろん中身もお菓子なのだが、(はこ)やお菓子、すべてを取り払うと紙が隠されている。  紙袋の受け渡しまでバレていたら……と瓜生は思うが、いままでこの方法では発覚することなく済んでいた。
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