雨の間にだけ活動するはずの泥棒が、なぜか今回ばかりは

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 泥棒は何気なくその原稿を読み始めた。  泥棒はろくに小説など読んだことはなかったが、読み始めると面白いものだと夢中になった。  泥棒はそのまま夜が明けるまで読み続け、最後まで読み切ってしまった。  その頃には既に雨は上がり、空は晴れ渡っていた。  起き出した作家は、ようやく書き終えた原稿の推敲に入ろうと書斎にやってきた。   そこで目にしたのは、自分の小説に感動して涙を流す泥棒の姿だった。  喜んだ作家は、自分の小説に感動してくれたお礼だと言って盗んだものを全部くれてやり、通報もしなかった。  泥棒はまんまと戦利品を手にしたうえに、最後の仕事も捕まることなくやり遂げることができた。  しかし欲が出てきた泥棒は、再び盗みを再開しようとした。  どこを目標にしてどのように盗もうかと計画を立てていると、頭の中に読んだばかりの小説の文章が浮かんできた。  浮かぶままにそれをパソコンに起こし始めた。泥棒は止まらなくなり、それから三日三晩続けてキーボードを打ち続けた。  その作品を誰かに見てもらいたくなった泥棒は、出版社の公募に応募してみることにした。
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