雨上がりの告白

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 放課後。雨はずいぶん弱くなって、空も朝よりも明るくなった気がする。  とは言え、まだ止んだわけではないし、どんよりとした雲には気持ちも下がってしまう。 「風ちゃん、帰りどうするの?」 「え……あー、部活、あるかも分かんないし、とりあえず靴下取りに行って聞いてくる」 「そっか」 「うん」  帰る支度をしてから、部室に向かおうとした私を引き止めたのは、太陽だった。 「部活なかったらさ、その、一緒に帰らない?」 「……え」 「あ、えっと、いや、無理なら、全然」  慌て出す太陽に、私も慌てて頷いた。 「うん! いいよ! ちょっと待ってて、聞いてくるね」 「うん、待ってる」  なんだか、心臓がさっきからおかしいくらいにドキドキしてる。  一緒に帰ろうなんて、初めて言われた。  太陽の顔が、ほんのり赤く見えた気がして、私まで額が熱くなってくる。  部室棟に行って、干していた靴下を手に取った。すっかりとは言えないけれど、ほぼ乾いていたからすぐにその場で履いた。  そういえば、今朝の占い。一位は牡羊座だった気がする。太陽は確か牡羊座だ。  不意に思い出して、あたしは一位のラッキーアイテムが何だったか思い出そうとしていた。  まぁ、一位の時点ですでにラッキーなのに、さらにアイテムを使ったらラッキーとラッキーで最高じゃん。  最下位の私には、雨が上がることを祈ることしかできない。それが私のラッキーアイテム「雨上がり」だったから。  悪天候により、今日の部活はないことが判明して、私は教室に戻った。  太陽は待っていてくれるだろうか。  さっきのは、夢なんかじゃないよね? ドキドキが募っていって、足の歩幅が自然と狭くなる。 「あ、風ちゃん。おかえり」  にっこりと微笑んでくれる太陽の姿が教室の中にあって、心臓がいつも以上に跳ね上がった。 「た、ただいま。今日は部活ないって」 「本当? やった、ラッキー」  素直に喜んでくれる太陽に、嬉しくなる。  並んで廊下をゆっくり歩いて、昇降口までやってくると、外は明るさを取り戻していた。  わずかな晴れ間に小雨が降り注ぐ。キラキラと光の粒になって見える玄関口の向こう側が、とても綺麗だと思った。 「わぁ、もう雨止みそうだね」  嬉しそうに声を上げる太陽。 「あ、そういえば……」  かと思えば、思い出したように傘立ての中から取り出したビニール傘を見て苦笑いしている。 「今朝の風で傘壊れたんだった」 「え、壊れた!?」 「うん。だから、風ちゃんの傘に僕も入れて」 「え!?」  ちょうどよくポンっと開いた傘に、太陽がくぐるようにして入り込む。  私の手から柄を掴むと、近い距離で微笑んだ。 「行こう」 「……う、うん」  今にも晴れそうな細かい雨のシャワーの中へ、水たまりを避けて歩き出す。
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