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家を建てる許可をもらうために、山からおりて役所のある村か町へ向かうテンたち。
途中では虫が多かったが、虫除けスプレーを使って歩いていく。
毒のあるヘビというニョロニョロしたのや、オオカミという肉食獣が襲ってきたりしたが全てロットが殺した。
山から出ると農作業をしている人がいたので道を聞くことに。
聞くのはロボットのロットだ。
「お仕事中にすみません」
「あん?」
「役所へはどう行けばよろしいでしょうか」
「やくしょって役所か?」
「家を建てる許可をもらいたくて」
「あー、そんなら町の役所か。向こうのほうにずっと行ったら町に入る門があるから」
向こうを指差す農作業の人。
「ありがとうございます。これ、よろしければお礼です」
ロットは黒板から、木を掘ったミニチュアサイズのイノシシを取り出した。
農作業の人からは何もない空間から取り出したように見える。
「うへー! あんたすごい魔法使いさんかね」
「まあ、そのような者かもです」
「そのイノシシもちっこいけど本物そっくりやな〜」
「ありがとうございます」
「もらってええのか?」
「どうぞ」
「ありがとうな」
教えられた方向へ歩いていくテンたち。
「さっきのイノシシはロットが作ったの?」
「はい、マスター。私は寝ないので夜にいろいろしてます」
「なるほどね」
しばらく歩くと大きな道に合流した。通行人もちらほらいる。
「お母さん、あれはなに?」
指差すテン。
「さあ?」
首をかしげる人型ゴーレム。
「マスター、あれはウマが引く馬車という乗り物です」
ロットが説明した。
「ウマ、バシャか」
異空間で育てられたテンにとって、外の世界は知らないことばかりだ。
人型ゴーレムもそれほど知識を持っていない。
「ロットが何でも知ってて助かるよ」
「ありがたいお言葉ですが、黒板から引き出す知識ですので。私の能力ではありません」
「そうなのか。でも、黒板をそんなに上手く使えるだけでも大したものだよ」
「ありがとうございます」
町へ入る門が見えてきた。
町の中へ入るにはいろいろあるようだ。
テンたちは門番に身分証の提示を求められた。
そんな物は持ってない。
「マスターは他の国の高位魔法使いです。この国の身分証など持っていません」
「他国の高位魔法使い?」
人型ゴーレムを見る門番たち。
「いえ、私のマスターはこちらのお方です」
テンに手のひらを向けるロット。
「は?」
13歳のテンを見ていぶかむ門番たち。
「とても高位魔法使いには見えないが」
ロットはテンにオートライフルを出すようにお願いした。
黒板からオートライフルを取り出したテン。
「いっ、異空間魔法!?」
驚く門番たち。
「マスター、今から私が空に投げる物を私が『どうぞ』と言ったら撃ってください」
「あ、うん」
ロットは黒板から木の塊を取り出すと空に向かってブンと投げた。
あっという間にはるか上空へ飛んでいく木の塊。
テンはそれにオートライフルを向けた。
自動で照準がロックされる。
『どうぞ』
引き金を引くテン。
ドン!
発射される弾丸。
ドン!
正確に着弾し、上空で木の塊は木っ端微塵となった。
「さすがはマスターでございます」
「あ、ありがとう」
いや、しかし、僕は引き金を引いただけだと思うテン。それくらいで褒められてはくすぐったくなる。
「魔方陣も無し、さらに無詠唱による異空間魔法に攻撃魔法。マスターは魔法の超絶天才でございます」
門番たちにどや顔をするロット。
「お、おい、ロット」
テンはますますくすぐったい。
「た、確かに異空間魔法はすごいが、攻撃魔法は武器を使っただけというか」
「ああん?」
門番を睨むロット。
「あ、いや」
「あの武器はマスターが魔法で作った物で魔法で動かす武器なのです。なので攻撃魔法なんで、すっ!」
「わ、わかった」
つらつらと嘘を言うロット。
「お、おい、ロット。あんまり目立たないようにしてほしいんだけど」
「申し訳ありません、マスター。力のある者ほど謙虚に、でございますね。勉強になります」
「え? まあ、うん」
「さすがはマスターでございます」
門番に向きなおるロット。
「さて、町の中に入れてもらいます」
「あ、いや、いくら高位の魔法使いでも身分証もないのでは」
「では、身分証を無くしたりした人はどうするのですか?」
「それは、身元の確かな人に身分の保証をしてもらうとか」
人型ゴーレムが何かを取り出して門番に見せた。
「あの、これでは駄目ですか?」
「ん? ……えっ? は? こっ、これは!」
「伝説の大賢者、私のマスターでもあるライトール様の身分証でございます」
「し、しかし、どうして貴女がライトール様の身分証を」
「……それは秘密です」
「まさか盗んだ」
「なんですって!」
いつも冷静な人型ゴーレムがキレた。
「あ、いや、そ、その、ライトール様から身分証を盗める者など存在しませんよね」
「ふー、その通りです」
ちょっとした騒ぎを聞いて、門番たちの上司がやって来た。
「おい、どうした」
「それが」
上司に説明する門番たち。
テンたちに頭を下げる上司。
「部下たちが大変に失礼をいたしました。ライトール様は身分証を異空間に収納しているはず。そんな身分証を盗めるわけなどありません。もし盗めたら、その存在はライトール様より上の存在」
「なんですって?」
ふたたび静かにキレる人型ゴーレム。
「あ、いや、その、盗んだなんて本気で思ってません。ライトール様の身分証をお持ちの方を疑うなど。どうぞ町へお入りください」
「ありがとうございます」
テンたちは町へ入ることができた。
「お母さん、伝説の大賢者様のお世話をしてたの?」
「そうよ、テン。あとで落ち着いたら説明するわね」
「うん」
テンたちは役所へと向かった。
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