雨上がりで晴れれば良いのに。

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 私は虐待されている?  ネグレクトって虐待ですか? 母は私をゴミ箱に捨てずに家に入れてくれています。  小学校5年生。  知ってますか?  中国四国地方は公立小学校でも制服通学の学校が大半です。  離婚する前は東京に隣接する神奈川に住んでいたので知りませんでした。    真っ白なポロシャツにハーフパンツで登校する今日。  全国では小学生って私服通学が普通なんですね。  制服の利点は貧富の差が明るみにならないこと⋯⋯。  大人は何も分かっていません。  制服ほど貧富の差が如実に出てしまう服装はないのです。    私のポロシャツは母が誰かがゴミ袋に捨てていたものを掘り出したもので灰色です。  でも、私は幸せです。  母は父と離婚しても私を捨てずに育ててくれています。 「ビンボー! ビンボー! ビンボー!」  地方らしくヤンキーの子みたいな髪を染めた子が幅を利かせています。  教室で私を囲んで罵っていますが、彼らの何が偉いのでしょうか。  言葉遣いも荒い彼らの番長の鈴木くんは駅直結のタワマンの最上階に住んでいるそうです。  別に鈴木くんに背いたところで、彼らには何の影響もありません。  別に鈴木くんの親が彼らの両親の上司である訳でもありません。  でも、大人が高層階にいる人が上だと言えば、子供もそれに従うしかありません。  「なんだ! お前! 殺すぞ!」  乱暴な口調の鈴木くんが怖くて、いつも目を逸らしてました。  残念ながら、地方都市ではは荒っぽい言葉を使うような雑な子育てでも、金を持ってれば称賛されるようです。  授業参観にきた鈴木くんの母親はいかにもハイブランドで固めています。そのミニスカート姿を小学生の私は場違いだと思いましたが、地方は受け入れているようです。  家に帰ってもご飯は用意されていません。  水道を捻っても水は出てきません。  私はいつものように外に出て雨が降るのを待ちます。  この渇きを癒してくれる雨が必ずあるのだと信じています。    小学5年生。  どうして、このように授業は長く退屈なのでしょうか。  5時間目で終えてれば、雨を飲めて満たされた低学年の素晴らしい日々を返して欲しい。  それなのに、6時間目までクダラナイ教師に付き合わせれました。  下校時刻には雨が止み、雲ひとつない青空が広がってます。  私は必死にまた私を潤してくれる天の恵があるのだと外で待ちました。  雨上がりの青空はきっと誰かの希望になる。  私以外の誰かの⋯⋯。
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