天気雨の女

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「いいか、会っても関わるなよ。白いワンピースの女性だ」 祖父に言われ、戸惑いながらも家を出た。 田舎の小さな村だから、近所の酒屋で日用品も買える。 めんつゆの種類に悩み、店主のおじさんに聞いてみた。 「信太の家のお母さんが買っていくのは、これだよ」 と、おしえてもらえた。 「ありがとう、おじさん」 「どういたしまして。お、空が曇ってきたな、降らないうちに帰れよ」 「あ、そういえば。天気雨のときに綺麗なおねーさんが出るって、 おじさん、そういうの知らない?」 「あぁ、人の命を奪う女性のことだね」 「そんな怖い話し、初めて聞いたんですけど」 「まあ、大人は話したがらないよ。悲しい事件があったから」 「どんな?」 「恋人同士が、天気雨で民家の軒下で雨宿りしてたんだ。 そのときに雷が落ちてきて、女性のほうだけ死んでしまったんだ」 「その幽霊がいまでも出る?」 「そう、天気雨の日にね、恋人を探してるんだ」 聞いてる間にも、黒雲と青空で半分になった。 僕は怖くなって、おじさんに慌てて挨拶して酒屋を去った。
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