天気雨の女

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「助けてください、雨が急に降ってきて、中に入れてもらえませんか!」 僕は民家のガラス戸を叩いた。 けれど反応は無い。 「こっちゃん、ねえ、結婚してくれるって本当? ねえ、聞かせてよ、こっちゃん」 もう恐ろしさの限界だ。 すぶ濡れになってもいいから家に逃げ帰ろう! そう思ったとき。 雨が小降りになってきた。 「由紀子(ゆきこ)迎えに来たよ、孫を怖がらせないでくれ そして雨宿りは、もう終わりにしよう」 「え?おじいちゃん?」 祖父が、茶色い花柄の傘を差して立ち尽くしていた。
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