49日目の水たまり

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「秀夫、靴が濡れちゃうよ」 「49日目だよ、俺が死んで。これで雨は、おしまい」 「どういうこと?」 「死んだのが残念でさ、ずっと泣いてた。それが雨になってた。 でも、やっと死を受け入れられた。もう行くよ」 「秀夫、イヤだよ、ゲームしようよ」 「ダンジョン攻略ゲーム、ちょうだい」 気づくと、そのゲームのソフトを手にしていた。 言われるままに秀夫に渡した。 「ありがとう、これ、もっともっとやりたくて、心残りだった。 隆が友達で楽しかったよ、隆、元気でね」 秀夫が夏の日差しのような、まぶしい笑顔を見せた。 「秀夫!」 秀夫の身体がみずたまりへと、ゆっくり沈んでいく。 「秀夫ーっ!」 おもわず手を伸ばして水たまりに飛び込んだけれど、水が弾けて 靴が濡れただけだった。 目を覚ますと泣いていた。 そして。 両足が濡れていた。
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