49日目の水たまり

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ふと思い立ち、部屋の中を探ってみる。 ダンジョン攻略のゲームソフトだけ見つからなかった。 「秀夫になら、あげていいよ、うん......」 夢だけど、夢からのメッセージだったんだ。 僕は足をタオルで拭きながら実感していた。 秀夫、君はもう、雨が上がったんだね。 秀夫の、晴れ渡る空のような笑顔が心に焼き付いている。 僕は、僕は......。 僕は、母の置いてくれていた食事を食べてみた。 ぜんぶ食べきった。 秀夫が褒めてくれていた母の料理は、確かにおいしかった。 なんだか僕も、雨が上がったような気がした。 だけど、秀夫みたいに49日間で平気になんてなれない。 悲しい、悲しいよ、まだまだ悲しい。 ずっと悲しいよ、苦しいよ。 それでも。 それから先では、雨の降る夢を見なくなった。 ――完――
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