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◆◆◆ のんべんだらりと過ごしながら、それでもあちこちから上納金をかき集め、なんとか今月もやり過ごした。 だが、ほっとしたのも束の間、カシラと裕之を会わせた1週間後のある日、親父の屋敷にいたら、裕之の母親が突然やってきた。 「組長はいるの? いるなら是非お話したい事があるの」 母親だとわかったのは、座敷に踏み入ってきた時に自ら名乗ったからだが、不躾に親父の座敷に上がり込んできたって事は、部屋住みの連中がとめるのを突破したって事だろう。 にしても、礼儀知らずもいいとこだし、その上度胸もすわっている。 俺との関係を裕之が母親に話してるとは思えねぇが、だったらなにをしに来たのかわからねぇ。 俺は親父のそばにいるが、親父は怪訝な顔で裕之の母親を見ている。 俺が代わりに聞いた。 「なんの用だ」 「あなた、あの時電話に出た人ね、声でわかるわ」 裕之を助けた時に電話で話したが、ちゃっかり声を覚えてたらしい。 「そうだ」 「よくもソープにぶち込むだなんて言ってくれたわね」 母親はあん時に言った事を言ったが、てめぇの事を棚に上げてよく言うぜ。 「そりゃ、あんたが息子にウリをさせようとしたからだ」 つくづく呆れた女だ。 「あの子はあたしの子よ、親なんだからどうしようが勝手じゃないの」 当たり前のように言ったが、こいつ、頭が普通じゃねぇ。 「はあ? ふざけた事を抜かすな、親だからってガキを好きにしていいわけがねーだろうが」 「うるさいわね、兎に角あなた、裕之を誘い出して会ってるでしょ、あなたこそなにしてるかわからないわ、あの子に手を出したんじゃないの?」 俺を疑ってきやがった。 「俺はなにもしてねぇ、裕之が寂しいって言うから、兄貴の代わりになってやったんだ」 「そんな事言って、あの子はあんな風に可愛らしい、だから、そういう人にモテるの」 「で、あのブラバス野郎に売ったのか?」 「あの人はちょっとした知り合いよ、ちゃんとした人なの」 この女、もう母親じゃねぇ。 「ほお、ちゃんとした人間が、ガキを買うのか?」 「んもー、なによ、ヤクザの癖に!」 正論を叩きつけると逆ギレ。 組長宅に押しかけてきて、俺らに向かってよくそんな口がきけるものだ。 親父はあの件について知らねぇが、この際構わねぇ。 頭にきた。 「ったく……、ああ、じゃ……兎に角よ、話を聞こうじゃねーの、何しに来たか話せ」 「だからー、組長さんに会わせてよ」 こいつは目の前にいる親父が、組長だと気づいてないらしい。 「あのな、しょうもねぇ事で、親父を呼ぶわけにゃいかねぇんだよ」 だったらそれで構わねー。 「葛西、もういい、なああんた、俺が組長だ」 親父はついに黙っていられなくなったらしい。 「あっ、おやっさん」 「あら、あなたが組長さん?」 母親は親父を見て言ったが、何故かニンマリと笑った。 「ああ、そうだが、なんの用だ」 「さっきも言ったけど、この人があたしをソープにぶち込むって言ったの」 なにを言うかとおもや、あん時言った事をまた口にする。 「葛西、本当か?」 親父は俺に聞いてきた。 「いや……そうっすけど、それには事情がありまして」 「何故そんな事を言った」 「こいつが裕之にウリをやらせようとした、だから俺はムカついて脅したんす」 俺は真実を話した。 「ウリって、どこに証拠があるの?」 ところが、母親はすっとぼけてやがる。 「なにぃー?」 「あたしがやらせたって証拠を出してよ」 このアマ、つけあがりやがって、ビンタしてやりてぇが、親父の前でそれはできねぇ。 「この……」 「葛西、駄目だぞ」 親父が一言注意してきた。 「はい、分かってます」 その後、親父は母親の言い分をひと通り聞いたが、母親が言った事は自分にとって都合の悪い箇所を抜いた話だった。 頭にきて『そいつの話はほとんど嘘だ』って訴えたが、親父は黙るように言う。 母親は言いたい放題言って満足したらしく、最後に俺に向かって『2度と裕之には会わないで、それなら許してあげる』と、そう釘を刺して座敷から出て行った。 「葛西」 「はい」 親父と2人きりになり、非常に気まずい空気になった。 俺は親父に叱られるのを覚悟した。 「あの母親が言った事は、ほとんどが嘘だな」 けれど、親父は分かってくれていた。 「はい」 「お前はその息子を守る為に動いたんだな?」 「はい、そうです」 「息子の事をもう少し詳しく聞かせてくれ」 「はい」 俺は裕之の置かれている環境やあの母親がやらかした事など、話せる事は全て話していった。 ひと通り話し終えると、親父は腕組みをして考え込んだ。 「あの母親は母親失格だ、俺の古くからの知人に刑事がいる、そいつに相談してなんとかして貰おう、ガキにウリをやらせるのはたとえ母親でもやっちゃいけねぇ事だ」 座敷は静まり返ったが、やがて親父は静かに口を開き、信じられねぇような有り難い事を言ってくれた。 「あ……、そいつはほんとうですか?」 「ああ、任せな」 「ありがとうございます!」 親父には感謝してもしきれねぇ。 嬉しさのあまり、泣きたくなった。 ◇◇◇ 親父が動いてくれたお陰で、裕之の母親は逮捕され、実刑判決を受けた。 勿論、裕之を買った客もだ。 裕之は母親が逮捕されて以来、落ち込んでいた。 多分、いくら酷い母親でも、母親は母親だからだ。 俺は裕之を励ましたくて、自分のマンションに連れて行った。 裕之は部屋の中を見回して『俺、ここに住みたい』と突拍子もない事を呟いた。 俺もいっそそうしてやりたかったが、もし裕之に求められたら、やっちまいそうな気がする。 それが怖ぇ。 それと、俺にはまだやらなきゃいけねぇ事がある。 その日、裕之は穏やかな面をして俺の部屋で過ごした。 これで少しは元気になってくれりゃいいが……。 それから数日後、俺は夜になって裕之の家に行った。 夜なら裕之の親父が仕事から帰ってるからだ。 俺はリビングに通され、ソファーに座り、テーブルを挟んで親父と話をした。 「あいつがあんな事になって、こっちは大恥をかいた、あんな女と結婚するんじゃなかった」 父親は開口一番に母親が逮捕された事を口にする。 俺は頭にきた。 「世間体なんかどうでもいい、裕之はウリをやらされそうになったんだ、あんたはどうも思わねぇのか?」 「そりゃ……可哀想だとは思う、ただ、これが女の子なら妊娠するかもしれないし、マズいだろう、しかし裕之は男だ、男ならそこまで大袈裟にしなくても」 こいつもどこかイカレてる。 「そういう問題じゃねー、男女は関係ねーだろ、我が子がひでぇ目にあったんだ、買った男に対してぶん殴ってやりてぇとか、思わねーのか?」 「いや、それは……、裕之にカウンセリングが必要なら受けさせる」 なんなんだ? 普通なら自分がなんとかしようと思うのが父親じゃねぇのか? これじゃまるで他人事だ。 「あんたな……、母親共々親としちゃ終わってる」 裕之は俺の隣に座っているが、俯いて膝を握り締めている。 「ああ、そうかもしれん、俺も元妻も……互いに勝手な事をして生きてきた、子供ができたのも作ろうと思ってたわけじゃない、それでもあいつは……女の子が欲しいと言った、俺はどっちでもよかったが、いざ生まれてみれば男だった、妻は酷く落胆していた、俺は結婚して家庭を持つという事を望んでたわけじゃない、元妻とはなんとなくくっついただけだ、だから……子育ては妻に任せた」 この父親も母親と同類で、同類だからくっついたんだろう。 裕之は目の前で親父が責められてつれぇかもしれねぇが、俺はこの親父も母親同様許せなかった。 「あのな、お父さんよー、人間ってやつは生みっぱなしってわけにゃいかねぇ、オギャーと生まれ落ちて、1番最初に見るのは親の面だ、で、食いもんを与えられ、下の世話を受けなきゃ死んじまう、非力な存在だ、だからよ、親側がどんな気持ちで育てようが、子供は当たり前に親に懐く、例えどんな親だろうが、親に愛されてぇと思うんだ、できた親ならしっかりと可愛がるだろう、けど、あんたらは違った、成り行きでガキを作ったはいいが、親なら当然ある筈の愛情ってやつがほぼ皆無だ、違うか?」 俺自身、糞な親のせいでその辺りは身に染みてわかっている。 ちょいと説教してやらなきゃ気が済まねぇ。 「仰る通りです、葛西さん、あんたはできた人だ、裕之は組に入りたいと言ってるが、どうかよろしくお願いします」 ところが、父親は輪をかけてとんでもねー事を言う。 「はあ? 何言ってやがる、あんた、正気か?」 我が子をヤクザにしてくれって頼み込む親なんざ、聞いた事がねー。 「葛西さん! いいんです、父さんは学費は出してくれるって言った、俺はそれだけで十分です」 すると、裕之が声を張り上げて言ってきた。 「裕之……、お前」 駄目な両親のわりにゃ、どんだけ出来たガキなんだよ。 「俺、中学を卒業したら部屋住みします、だから本当に……葛西さん、よろしくお願いします」 裕之がそこまで言うなら、これ以上父親を叱ったところで意味がねー。 「そうか……、ああ、わかった、もういっぺん、改めておやっさんに話をする」 親父には裕之が本気でうちに入るつもりだと、改めて話をするつもりだ。 「はい……、すみません」 父親との話し合いはそれで終わった。 俺は裕之に見送られて帰途に着いたが、裕之は傷ついている。 あの父親には裕之を癒す事は出来ねぇだろう。 裕之に、当面は毎日電話すると言った。 ◇◇◇ 季節は本格的な冬に入ってきた。 俺は約束した通り、裕之に毎日電話をかけ、会える時は会いに行った。 カシラは裕之がウリを強制されたと聞いて、会いたいとは言わなくなった。 普段は我儘な人だが、思いやる気持ちってやつは持ってるらしい。 今日は田西と一緒に動いてるが、奴には真っ先に話したから、一連の流れは知っている。 「兄貴、裕之はまた試験で早く帰るんすよね?」 「ああ、らしいな」 「っとー、俺がいたら邪魔になるし、2人で兄貴のマンションに行ってゆっくりしたらどうっすか?」 田西は変に気を利かせる。 「いや、別にお前がいてもいいだろう」 「ええ、俺は裕之の事、可愛いって思いますよ、ただ、裕之はやっぱり兄貴に惚れてる、だから、2人きりで会いたいと思うんす、ウリの事でショックを受けてるなら、2人きりで会う方が癒し効果があがると思うんで」 「うーん、そうか……」 確かに、そう言われたらそうかもしれねー。 田西と2人で回るところを全部回り、昼を過ぎてひとりで裕之を迎えに行った。 家の前に着いたら、即隣に乗せてまっすぐにマンションへ向かったが、裕之はやたら嬉しそうにしている。 「やった、へへっ、葛西さんの家に行ける」 「そんなに嬉しいか? なんにもねーぞ」 「そんなのいい」 「そうか……」 ワクワクする裕之を見たら、キスした時の事が蘇り……一抹の不安がよぎった。 俺は今でもノーマル、ストレートだと思っている。 刈谷みてぇにショタコンだったり、ゲイビをみたいとは思わねー。 なのに、裕之に見つめられると、ムラムラとした衝動がわき起こる。 自分でもこのムラムラがよくわからねー。 多分、もう間違いなく、裕之にがっつり惚れている。 ただの可愛らしいガキは、俺の一番大事なもんになっちまった。 マンションに到着し、裕之を部屋に招き入れた。 おかしな話だが、俺は女を連れ込んだ時と同じ高揚感を覚えていた。 部屋に入ってソファーに座るように促したら、裕之はいきなり抱きついてきた。 「こ、こら……」 俺は爆弾を抱えた状態だ。 着火するような真似をされちゃ、マズいにもほどがある。 「葛西さん、抱いてください」 「え……」 裕之は胸板に顔を埋めて言ってきた。 やっべー、心臓バクバクで、ナニが反応しちまう。 「俺、知らないおじさんにキスされそうになった時、おじさんはお尻を綺麗にして、ベッドの上でいい事をしようねって言った、体も少し触られたんだ」 裕之はウリをさせられそうになった時の詳細を語った。 「お、おう……、そうか」 俺は裕之を買った奴と同じ事をしかねない状況にあるので、めちゃくちゃバツが悪かったが、辛い気持ちは吐き出した方がいい。 「それと、これは恥ずかしいから内緒にしてたんだけど、キスを拒否った後、おじさんにオチンチンをしゃぶられた、俺、気持ちよくなって……射精したんです」 「あ、ああ……そうだったのか」 相手がおっさんだとしても、フェラされりゃ……そうなっちまうだろう。 「おじさんは俺が出したのを飲んだ、俺、恥ずかし過ぎてどうしていいかわからなくなった」 裕之は話をするうちに段々泣きそうになってきた。 「裕之……」 抱き締めずにはいられなかった。 俺は裕之が可哀想で堪らなかったが、不謹慎な事に……ナニが勃ってきやがった。 「嫌な事は忘れろ……」 必死に邪念を振り払って慰めた。 「だったら忘れさせてください、葛西さんに抱かれたら、きっと忘れられる」 なのに、禁忌な事を頼んでくる。 「それは……その」 ナニはやる気満々になっているが、裕之は昔抱いたガキとは違う。 大事な存在で、俺はこいつの兄ちゃんになりたかった。 そんな事ぁ自分でも分かってるが、それでも……こいつの事が好きだと思ってしまう。 「ここ、勃ってる」 苦悩していると、裕之がいきなり股間を握ってきた。 「うっ、お前……」 やっぱりマセガキだ。 「えへへっ、俺、やり方は調べてわかったし、ほんとの事言ったら……ヤルつもりで用意してきました、だから……抱いて欲しい」 俺を見上げて悪戯っぽく笑って言ったが、なんとも言えねぇ色香を振り撒き、ガキの癖に、いっちょ前に誘いをかけてきやがる。 据え膳食わぬは男の恥。 こうなりゃ……やる、やってやる。 俺が禁忌を犯しさえすりゃ、裕之の傷ついた心を救う事が出来るんだ。 決して……欲に負けたわけじゃねぇ。 「そこまで言うなら抱いてやる、その代わり……途中で逃げ出すなよ」 俺は自分で自分に言い訳をしてシャワーを浴び、裕之をベッドに連れて行った。 裕之ははしゃいでベッドに上がってきたが、ヤルとなりゃガキの遊びじゃすまねー。 裕之を抱き締めてキスをした。 もう止まらなかった。 いつか抱いたガキは、ただ突っ込んだだけだったが、裕之には女にやるのと同じように愛撫をした。 「あっ、あん……」 そしたら女みてぇな喘ぎ声を漏らしたが、中性的な見た目をしてるから堪らねぇ。 俺は昂る気持ちに従い、白い肌に舌を這わせ、裕之を裸に剥いて体中をまさぐった。 そしていよいよ合体する時がきたが、たっぷりとローションを塗り込み、ゆっくりと痛くねーように中に入れていった。 「ん、んんう、か、葛西……さん」 すると、裕之は苦しげに俺を呼んだ。 「どうした、やっぱいてぇか?」 「ち、違う……、すげー、気持ちいい」 「えっ……」 初めてなのに気持ちいいって、どういう事だ? 不思議に思ったが、ナニはギチギチのアナルに食いつかれている。 根元まで入れて裕之の上にかぶさった。 「はあ、きついな」 やべぇ、出ちまう。 裕之の頭を抱き込んで誤魔化そうとしたが、ナニはすぐにでもいっちまいそうだ。 「やっと……葛西さんとひとつになれた」 裕之は感動しているが……。 「キツキツだからよ、もう出ちまう」 ここんとこ抜いてねーし、もうもたねぇ。 「出してください、俺の中を葛西さんの精液でいっぱいにして欲しい」 「ああ、じゃイクぞ」 小さな体をしっかりと抱いて腰を動かしたら、ギチギチな肉穴が絡み付いてくる。 「あっ……」 2、3度擦っただけで出ちまった。 「んん、はぁ、はぁ、出てる、中に……、葛西さん、好き、もっと……」 裕之はうっとりとした面で口走ったが……マジでエロすぎだろ。 「このっ、全部出してやる」 裕之は淫乱な女のように背中にしがみついて欲しがり、俺は繰り返し突いて溜まったやつを全部出してやった。 「んんう、いい、めちゃくちゃいい……、キスして」 裕之は首に絡みついて誘ってくる。 俺は快楽の余韻に溺れながら、柔らかな唇を貪るように吸った。 後悔なんか微塵もねー。 俺はこいつが好きだ。 ……だから抱いた。 全てが終わった時、裕之は俺の背中を抱き締めていたが、ガキみてぇな面をしてる癖に、その表情はやたら艶を帯びて見える。 俺は遂に禁断のエリアに足を踏み入れちまった。 「あーあ、とうとうやっちまった……」 こうなった事は自分なりに納得しているが、俺は刈谷みてぇにはならねぇぞ。 裕之だけだ。 「これで、やな事を忘れられる、ありがとう」 裕之はケロッとした顔で礼を言ってきた。 「そうか、それならよかった」 傷が癒えたなら、良かったと思うべきだろう。 「ほら、凄く優しい、葛西さんはいいヤクザだ」 すると、今度はしたり顔で言った。 「あのな……、そうくるか?」 こいつは会った時のまんま、なにも変わっちゃいねぇ。 「えへへっ、俺、今超幸せ」 俺の腕の中ですげー嬉しそうに笑ったが、これがヤバい。 この屈託のねー笑顔……俺はこれにやられちまった。 親父、すまねー。
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