13番目の呪われ姫とご挨拶。

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「と、いうわけで。結婚する事にした」  帰宅後の弟妹を前にした伯爵は、"と"より前の説明を綺麗に端折って端的にベロニカを紹介した。 「……お兄様が」 「結婚」  伯爵の妹のベルと弟のハルは兄の言葉を復唱し、噛み砕く。  ベルとハルは互いに顔を見合わせた後、じっとベロニカを観察する。  美しい銀色の髪に、猫のような大きな金色の瞳。優しく微笑む彼女はまるで絵本から出てきたお姫様のようだ。  こんなに綺麗な人がどうして、没落寸前の貧乏伯爵家に? と思うと同時に"おめでとう"より先に浮かんだのは、 「「え? "結婚しました"じゃなくて?」」  事後報告じゃない! という驚きだった。 「ほら、だから言っただろ。事後報告で十分だ、って」  母は事後報告にしようと思う、と弟妹の反応を見て手の平を返そうとする伯爵に、 「……伯爵。私がいうのもどうかと思いますが、ごきょうだいの教育間違ってますよ」  良くありません、とベロニカはこれ見よがしにため息をついて首を振り、 「初めまして、ベロニカと申します」  ふつつか者ですが、これからよろしくお願いします、と鈴の転がるような声でふわりと笑って2人に自己紹介をした。  結婚のご挨拶に、とベロニカが持って来たお茶と彼女の手製のお菓子をみんなで食べる。 「うわぁ、すっごく美味しい!」 「オレンジの皮ってこんなに美味しくなるんですね! しかもオシャレ」 「でしょう。私リメイク料理や節約レシピにはちょっと自信ありですよ」  ちなみにこのお茶もオレンジの皮で作りましたと自慢げなベロニカ。  まともだ。  あの兄が結婚すると突然連れてきた相手なのに、物凄くまともだ。  などとベルとハルが思ったのは、最初だけで。 「と、言うわけで。今から第1回、伯爵の秘密大暴露大会を始めたいと思います⭐︎」  "と"より前の説明を綺麗に端折ったベロニカが唐突にそんな開会宣言をしたことで、二人はすぐさま認識を改めた。 「お兄様の」 「秘密?」 「ええ、せっかくの"ご挨拶"です。私、お二人と仲良くなりたいのです」  末長いお付き合いになるのですからとドヤ顔でベロニカが取り出したのは、それはそれは手が込んだ手製のフィリップと手書きのカード。  ご丁寧にカード一枚一枚に手書きで暴露するネタのジャンルが記載されている。 「はぁ!? なんだそれ」  ちょっと待て、と抗議の声を上げる伯爵に対し、 「何って、親睦を深めるならゲームかなって」  この日のために頑張って作りました! とベロニカは全く悪びれない。
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