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「お母さま、今まで本当にありがとう」 「こちらこそ、私を母にしてくれてありがとう」 「お母さまがわたしのお母さまで、本当によかった」  明日、結婚式を挙げる義娘のことを抱きしめながら私は安堵のため息を漏らしていた。  ああよかった。私はちゃんと母親をやれていたようだ。これでようやく肩の荷が下りる。 「お母さまったらどうしたの?」 「だって本当に嬉しいのだもの」 「そんなにわたしが結婚するのが嬉しい?」 「ええ、もちろん。あなたが幸せになってくれることこそが、私の願いだったのよ」  義娘への言葉に嘘はない。ずっと贖罪のために生きてきた。ようやくこれで、私の役割は終わった。この屋敷を出ていっても許されるだろう。そう思えたから。
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