4.拉致

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「秋造さん!」  草太が、なおも秋造にしがみついた。  「邪魔だぁ!」  秋造は、鬼の形相で草太を引き剥がし、脚で蹴り飛ばした。  強く蹴られた草太は、胸を押さえて仰向けに倒れ込んだ。 (草太!!)  雨音は、声に出して叫んだが、猿ぐつわで声が潰れてしまっていた。  雨音は、涙目で草太を見る。草太は、動かない。 (草太!! 草太!!)  秋造は、構わずに、黙々と山を目指す。 (草太!!)  雨音が、じたばたと暴れる。 (下ろして! 草太!!) 「おい、大人しくしろ!」  秋造は、流石に担いでいられなくなり、一旦雨音を下ろそうとした。  雨音は、秋造の腕が緩んだ隙に飛び降り、草太の方へと駆け出す。  猿ぐつわを外しながら、草太の傍に両膝を付いた。 「草太!」  しかし、草太はぴくりとも動かない。 「草太?」  さっきまで元気だった草太が、動かない。 「草太?!」  雨音の心臓が、どくどくと鳴り出す。 「草太……?」  また一人になるの? また私を置いて行くの? 「いやっ! 草太ぁ!」  必死に草太にしがみつく雨音の後ろから、秋造が近づいてくる。  秋造は雨音をどう大人しくさせるかそれだけを考えている。自分の足元に転がっていた拳大ほどの石を拾い上げた。 「殴って気を失わせれば……」  秋造は、雨音の背後で大きく腕を振り上げた。  その時。  パシーン!!  突然、夜を裂く鋭い閃光が天から地へと奔り、秋造の身体を貫いた。  秋造の手から、黒焦げになった石がぽとりと落ちる。秋造は、ばったりと倒れた。    ぽつりぽつりと、雨が降り始めた。  
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