2.雨音

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 草太は、完全に閉まった雨戸を恨めしく見つめ、背を向けとぼとぼ歩き出す。    暗くなった部屋の中に、雨乞い姫の世話役の女が入って来た。 「わ、何ですか、昼間から、こんなに暗くして」  女が雨戸に近づく。 「あ」  雨音が、かすかに声を漏らした。  女は小さな声に気付かず、雨戸に拳ほどの隙間を作った。昼下がりの陽の明るさがさっと差し込んできた。  外に草太の姿は見えず、雨音は、目を瞬かせて、安心した様に顔を伏せた。  世話役の女が雨音に向き直る。 「雨音様、明日は、大切な儀式です。不浄を避けるために今日の夕げは抜きですよ。その分しっかり湯あみをして早めにお休みください」  雨音は、小さく、はいと答えた。胸の中の答えは違っていた。
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