3.草太

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 村の中央にある広場で、村の者達は火を囲んで酒を酌み交わし、踊ったり歌ったりしていた。  草太たちは、その輪に近づいた。  雨乞い姫として外界から隠されている雨音の顔を知る者は村の者でも少ない。だが知る者もいるので、草太は雨音の頭に手拭いを被せていた。  楽しい様子に、草太の顔がほころぶ。ふと雨音を見ると、彼女は目に涙をためて俯いていた。 「雨音……?」 「ごめんなさい。私……」  草太は、どういうことか分からなかったが、雨音は明らかに悲しそうだ。 「戻る……?」 「うん……」  二人はそっと、祭りの輪から離れ、歩き出した。
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