トモロー

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トモロー

 朝から真夏の日差しが眩しい。  強烈な紫外線がジリジリと肌を焦がしていくようだ。  本格的にセミも鳴き出した。    夏休み前、最後のウィークエンド。  海の日が過ぎると、ようやく待望の夏休みだ。  これで多少は教職と言う激務から解放される。  ボクの名は明日葉友朗(あしたばトモロー)。  中学校の数学の教師をしていた。  朝から好きな音楽を流していた。  あいみょんの『マリーゴールド』だ。  ノスタルジックで何度、聞いても飽きが来ない。  ボクの夏の定番ソングだ。  この曲を初めて認識したのは夏休み真夜中のドン・キホーテだった。  店内に流れる曲を聞き、思わずボクは聞き惚れてしまった。  できればその場で曲名と歌っている歌手を教えてもらいたかった。  あいみょんと言う名前は聞き覚えがあったが、『マリーゴールド』が彼女の曲だとわかるのは、まだ先のことだった。 『ピンポーン♪ ピンポーン♪』  不意に玄関のインターフォンが鳴り響いた。 「あン?」  せっかくあいみょんの名曲にひたっていたのに無粋なインターフォンだ。  いったい誰だろう。  デリバリーを頼んだ覚えもない。 『ピンポーン♪ ピンポーン♪』  またインターフォンが鳴り響いた。 「ハイ、わかったよ。ただいま開けますね」  仕方なくボクはドアのカギを開けドアノブを握ろうとした。  だが、玄関の向こうからドアノブが回され勢いよくドアが開かれた。 「キャッキャッキャッ、トモロー!」  途端にピンクのツインテールの美少女が歓声を上げてボクに抱きついてきた。  熱烈なハグだ。 「わぁーーーーーッ!」  思わずボクは、びっくりして悲鳴を上げてしまった。 「おはよーットモロー!」  ピンクのツインテールの美少女はボクに朝の挨拶をした。  香水なのだろうか。  甘美で蠱惑的な香りがボクの鼻孔をくすぐった。  柔らかな胸の膨らみを感じた。  一気に心拍数は急上昇だ。 「あッううゥ……!」  ボクはうめき声を上げて動けずにいた。  朝っぱらからとんでもない挨拶だ。      
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