16人が本棚に入れています
本棚に追加
如月ラブリ
朝っぱらからとんでもない挨拶だ。
「お、おいラブリ。ボクの部屋に来るなら連絡してからにしろよ」
ボクは突然の出来事に面食らった。
いきなり抱きついてきた美少女は如月ラブリだ。
かつてボクが中学の教育実習生をした時の教え子だ。
当時、彼女は中学二年生だった。
それ以来の付き合いだ。
実家がすぐ近所なので、よくボクの家へ訪れ邪魔をしに来ていた。
主に借金の申し入れだ。
毎年、バレンタインデーの手づくりチョコやバースデープレゼントとして借金を棒引きしているので、総額いくら貸しているのかわからない。
かなりの額が有耶無耶になっていた。
「いやァトモロー。ヤバいんだって」
ラブリは切迫した様子で嘆いた。
「はァ、なにがヤバいんだよ?」
どうせ大したことではない。
ラブリは小さな切り傷でも大ケガだと泣き叫ぶ子だ。
とにかく小遣いが足りなくなって金を貸してくれと泣きついてきたのだろう。
「悪いけど、お金貸してくれない?」
可愛らしく手を差し出し無心した。
やはり借金の無心だ。
「はァ、ラブリにはもう何万円も貸しているだろう」
バレンタインデーの手づくりチョコで精算したが、また借金が増えていった。
細かい額はあやふやだ。
「わかったよ。今度、お年玉が入ったらまとめて返すから」
いつもこの調子だ。
「おいおい来年のお年玉まで借金の返済を待たせる気か。いったいいくら必要なんだ?」
「そうねえェ、よければ二万円。悪くても一万円。できれば三万円。面倒くさいから五万円、ちょーだい!」
可愛らしくボクの目の前に手を差し伸べた。
「なんだ。そのアバウトな借金は。だいたい五万なんて余裕があるかァ?」
ボクだって少ない給料でやり繰りしてるのだ。余裕などまったくない。
「ああァ、お腹ペッコリーナ姫よ。朝から二食しか食べてないの」
「いやァ、ペッコリーナ姫って。朝から二食食べれば充分だろう」
「おバカさんねえェ。ペッコリーナ姫はいつでもどこでもお腹を空かしているお腹がペコペコのヒロインなのよ」
「どこの卑しいお姫様だよ」
「えェ、いやらしいお姫様じゃないわよ。変なこと言わないで!」
ラブリは不満げに唇を尖らせた。
「いやァ、卑しいだよ。いやらしいじゃなくって!」
最初のコメントを投稿しよう!