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 全てはサトルの計画なんじゃないかと時生は思う。  が、次の瞬間には否定する。サトルはそういう巧妙な奴ではない。単純ストレートの剛速球ピッチャーだ。カーブやフォークが投げられなくて、エースになれなかった奴だ。  しかし、11月になって試験対策とは、遅すぎるし、通信制高校の範囲ではカバーしきれないものが大学受験には確実にある。  なんとなく雰囲気で、サトルと青山倫子が家庭教師をしてくれることになったのも、サトルの誘導だと思うが、彼女が不愉快に思っていないようなので、時生も流れに身を任せている。  勉強は廃校になった元母校でもある小学校から変わった生涯学習センターで行っている。  そこなら小さいが図書室もあるし、1階には喫茶もあって、元校庭では子どもも遊んでいる。どこかの部屋は囲碁や将棋の教室になっている。  2階建ての校舎の2階のいくつかを自主学習室として解放してあり、そこは誰でも無料で使うことができる。だから小中学生や、資格試験を勉強する大人もたまに来る。 「あ、これはねぇ」  と、教えてくれる倫子の髪が揺れて、一筋だけ入っているピンクの髪が流れた。それを耳にひょいと細い指がひっかける。ピアスは鹿の角みたいなデザインだった。  シャンプーなのか何なのか、彼女からは何かのいい匂いがした。  時生は問題に目を落とした。 「でね……」  彼女が説明をしてくれて、時生はうなずく。 「そっか、だからここに代入したらいいんだ」 「そう。すごい。時生君、理解早い」  あまり騒ぐのはダメなので、小さめに倫子は手をパチパチと叩いた。  時生は照れ笑いした。そして彼女を見た。耳に角が銀色に光っている。 「あの、角、見に来ます?」  そう言って、時生は我ながら何言ってんだと思った。が、倫子は目を輝かせた。 「いいんですか?」  その勢いに、時生も少し押された。 「はい、もちろん」  時生は笑顔の彼女を見てうなずいた。
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