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「これは何ですか?」  倫子がオフロード用車椅子を見て聞いた。 「え、見ます?」  時生が今度は心を踊らせる番だった。思わずスマホも見せる。 「これね、山道を走れる車椅子なんですよ。まだ僕はここまで荒れたところは行ったことないんですが、うちの近所のちょっとした坂とか段差は楽勝です。雪道もスタッドレスタイヤがあって」  時生が他のすごい人たちの写真や動画を見せると、倫子も驚いたようだった。 「これを時生君もするの?」  そう聞かれて、時生は動画を見つめた。 「どうかな、今度こそ親が心臓発作で死んでしまう気がする」 「確かに」  倫子は神妙に答え、時生は肩をすくめた。 「そうかぁ、でも車椅子でも山に入れるんだ……想像もしてなかった」 「ですよね。僕もです。見つけたときは興奮しました」 「春になったら、みんなでBBQしようよ。これで走ってるの見てみたい」  そう言われて、時生は大きくうなずいた。 「いいですね。スピンの練習でもしておきます」 「転ばないように気をつけてください。ご両親が心配するから」 「それはもう」  時生は親指を立てた。 「あ、帰りに蕎麦、持って帰ってください。父がどうしても渡したいって」 「え、嬉しい」  そう言われて時生はニヤついた。蕎麦ぐらいいくらでも。
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