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幌戸の山で遺体が発見されたというニュースは、全国的にも大きく報道された。当初は鹿の角が刺さっていたことは公表されていなかったが、しばらくしてから警察が発表したことで、その異常性から話題にもなった。
SNSでもいろんなプロファイルが行われたが、それによって事件が進展することはなかった。
東京からも管理官がやってきて、あれこれ調べて回ったが、1週間経っても目ぼしい手がかりがなく、捜査対象を広げるしかないかと、やみくもに範囲や対象を広げ始めていた。
状況的には男性だろうということで、片っ端から事情聴取が行われた。
特に遺体が見つかったエリアが私有地だったことで、持ち主には青山も何度か会いに行って話を聞いた。
町に家もあるようだったが、人付き合いが苦手そうな人物で、山暮らしが性に合っていると話した。上からは早く証拠を見つけろと言われ、町の人からは警察は何をしてるんだ、納税者を犯人扱いかと嫌味を言われていた青山は、彼の朴訥とした話し方にちょっと癒やされた。
「あの、しばらく遺体発見場所は立入禁止にさせていただきますが、大丈夫でしょうか?」
青山が聞くと、岩崎満は遠くを見つめた。
「仕方ないです。でも勝手に人は入ってきます。きのこの会社も文句を言ってました」
「加瀬木きのこ、近くにありますね」
橋本が検索しながら言った。青山は考える。
「勝手に入るのはダメです」
「そうですね。しばらく警察官が警戒します」
「警察は嫌いです」
「はは、ですよねぇ」
青山は頭を掻いた。橋本はむっとしていたが、それを目で制する。
「ご迷惑をおかけします。また何かあればご連絡ください」
青山は礼をして、橋本と外に出た。
「きのこ窃盗……そういうトラブルという筋もないではないか」
「そうなんですか? サイコパスなのに?」
「悪魔が歯を向くきっかけは、案外ちょっとしたことなのかもだろうが。行くぞ」
青山が言うと、橋本は口をへの字にして肩をすくめた。
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