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2人はきのこ会社にも問い合わせてみたが、結局は特に何の新証言も得られず、やっぱり上にはため息をつかれたのだった。
「鹿っていうと、アレですね。何年か前に事故で鹿の角、欲しがってた子がいましたよね」
青山と橋本が、警察仲間で飲み屋で愚痴っていると、交通課の玉田が言った。
「へぇ、なんで角ですか?」
橋本が聞くと、玉田は日本酒を飲みながらふっと笑った。
「鹿にぶつかって事故ったんですよ。それで形見っていうか、仇?に、角を持って帰りましたよ」
「え、執着してた感じ?」
思わず青山は聞いた。そういうことから始まる殺意もあるかもしれない。
「いやー、私がジョークで持って帰る?って聞いたら、最初は引いてたからどうですかね」
彼女はそう言って笑った。
「おまえが言ったのかよ」
「鹿って死んだんですかって言うから、死んだよ。でも角残ってるよ、持って帰る?って聞いたら、えってなって、それから次の日に、もらっていいですかって来たから、書類用意してあげた。面白い子だったなぁ」
「おまえが誘導してるだろうが。その子って何歳?」
「高校生って言ってたかな。署に資料ありますよ。あ、そう、蕎麦屋の子です。あそこの橋の近くの」
玉田は想定の地図を思い浮かべて、自分の箸でポイントを指した。
「宮川大橋?」
「そうそう」
「真木食堂」
「あ、それ」
青山はうーむと唸った。最近、娘が蕎麦をもらってきたような気がする。
「他にアテもないですし、明日、一応話だけ聞いてみます?」
橋本が言って、青山は渋々うなずいた。
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