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岩崎満が帰っていき、翔太が時生たちのところに戻ってみると、2人は楽しそうに笑っていた。
オフロード車椅子に乗ってみた倫子は、キャッキャとはしゃいでいて、時生も切り株に座ってそれを見て、ゲラゲラと笑っている。
翔太はホッとして、時生が楽しそうで良かったと思った。
本当は事故現場に行くのはどうかと思っていた。
時生は、まだカウンセリングに通う身だし、鹿のトラウマだって完全に克服したわけではない。だからサポートスタッフとしては、少し心配だったのだ。
が、そんな心配はいらなかったようだ。
時生は特に無理をしているようでもなく、事故現場を懐かしそうに見ていた。無茶をした反省もあるのだろう。自分もバカだったとちょっと後悔しているようにつぶやいていた。
倫子が先導してくれたのも良かったのだろう。
彼女は客観的な視線で冷静に事件を検証していた。だから時生も感情を交えずに答える事ができていた。
「はい、そろそろ帰ろうか。泥団子作ってんじゃないよ、小学生じゃあるまいし」
翔太は2人に言って、2人は笑いながら手を止めた。
「倫子さん、すごく本気で勝ちにくる。酷い。俺、障害者なのに」
「煽ったのは時生君です」
「いや、違うでしょ、最初は倫子さんが泥団子作る天才とか言い出したから」
「張り合ってきたのは時生君です」
「そうなんだけど」
「はいはい、時生、車に戻るよ。ズボン汚れてんじゃん。漏らしたみたいになってるよ」
翔太が仲裁すると、2人はまたケラケラ笑った。
何だよ、青春かよ。
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