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(世界のどっかで、雨が降らんで困っとる土地もあるやろ。この雨男体質のおれがそこに行けば、重宝されるんちゃうやろか――)
そう考えたところまでは良かった。
だが、そこから前世より続く悪人の性が出てしまった。
(そんで雨乞いかなんかのパフォーマンスをして自分が雨を降らせたと人々に信じ込ませたったら、カネになるんやないやろか。そしたら借金もすぐ返せるわ)
そう考え、海外の干ばつ地帯へ移住する決意をした。
しかし、傘の呪いはそう簡単に解けるものではなかった。
砂漠が広がる土地に降り立った晴反は、そこでも傘に苦しめられることになるのだった。
ギラギラと太陽が照りつける砂漠は、まさに灼熱地獄。日傘やパラソルなしで居ることは自殺行為に等しいが、使えば日差し以上の厄災が降りかかるのは目に見えている。
それでも彼はめげなかった。
藁にもすがるような思いで雨を待つ現地の人々を集め、祈祷師のフリをして適当に雨乞いの儀式を行った。
(これで雨が降れば、おれのおかげだと崇められて一躍億万長者や――)
だが、どういうわけか雨男体質は影を潜めた。どんなに祈っても雨が一滴も振らない。日本にいた頃はあんなにも滅入るくらい降り続けていたというのに、一か月、二か月、半年経っても、雨雲の立ち込める気配すらない。つまり彼がやってくる前と何ら変わりはなかった。
燦々という表現が生温いくらいの日差しが痛いほど突き刺さる。最初は救世主が現れたと思っていた現地の人々も、次第に彼を疑いの眼差しで見るようになった。
果てにはインチキ術師として石を投げられた。
(くそう。灼熱地獄で干からびた上に干されたわ)
そこにいる意義を失い、すぐに帰国の途についた。一体何をしに行ったのか。
まさにどん底の状態で晴反は帰国した。
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