5 転校生

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昼休み。クララは食堂に行くようだ。本当に警戒心ないなこの子。 俺は食堂中を見ることのできる端の席に陣取った。勿論、鈴木が向かいに座っている。 「珍しいな、平世が食堂なんて。いつも昼は菓子パンだろ?」 菓子パンは効率よく炭水化物や糖分を摂取できるので重宝している。どうしても家に帰るとバランスの取れた食事が出てきてしまうので唯一学校でのみ糖分を蓄えられるのだ。なんせ、頭と体力両方を使う仕事を夜にしているからな。 「ああ、少し気分が変わってな」 「ふーん。なあ、それ一口くれよ」 「いやだ。お前の一口はデカすぎる」 「どうせ大盛なんだからいいだろ」 「よくない。大盛にしているのはそれだけ食べる必要があるからであって、それを減らされたらたまらない」 「じゃあ、俺の半分くっていいからさ」 「ならよし」 「っしゃ」 ごくごく普通の男子高生の会話をしていたのだが、急にあたりがシン…となった。 当然、俺はその原因を知っている。気配で分かっていた。 が、わからない。なぜパスカル・オブ・フォルジェがここにいるのだろうか。 先に声を発したのは鈴木だった。角度的にも彼の方が見やすかったろう。 「ク、クララしゃん、どどどどうしてっ?」 おい、きょどりすぎじゃないか。 「あら、突然ごめんなさいね。クラスメートと仲良くなりたくて」 ほう。振った相手にも優しいのか。じゃ、お邪魔虫は退散しますよっと。 ガシャンっと音がして俺の方にクララが倒れてきた。 ? 状況から察するに、彼女はお盆から落ちた紙ナプキンに滑ったようだ。そして俺はというと… 「まぁっ大変!ごめんなさい、制服を汚してしまって…」 ものの見事にスープまみれだ。 今日はついてない…。 お詫びにと俺は明日の放課後クララと遊ぶことが決定した。 まあ、半分くらい押し売りだったんだけど。 自意識過剰かもしれないが、彼女はこれを狙っていたんじゃなかろうか。 俺にも感知できないほどの何かを持っている可能性も捨てたわけじゃない。なんせこの年まで無傷で生きている少女だからな。あの家で。 なんにせよ、明日で分かるか。 ああ、言うまでもないが鈴木にはたいそう恨みがましい目で見られた。いや、訂正する。その場にいた男子学生全員から、だ。
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