2 暗殺者としてのすたあと

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2 暗殺者としてのすたあと

俺がこの世界に入ったのは、幼い頃だ。確か4歳か5歳くらい。 両親が事故にあい、親戚もおらず天涯孤独になった俺を拾ってくれたのが暗殺者集団…とかそういうよくある闇堕ち展開ではなく。 俺の両親は健在だ。では家族で暗殺業を? 答えはノー。俺がこの仕事をしていることは家族には秘密だ。 ではどんな経緯でこうなったのかというと。 その答えは…迷子になったからだ。 まあ、幼い子供は誰しも経験するだろう。例にもれず、俺もショッピングモールに家族3人で遊びにいったところ、迷子になったのだ。当時流行していた子供向けアニメのグッズコーナーで、だ。な?よくあるだろ? が、よくある話ですまなくなったのはこの後だ。 パンッと乾いた音がして、少し遠くにいた男が倒れた。と思ったらその男から赤黒い液体が流れはじめた。 当然、ショッピングモール内は大パニックに陥った。 が、俺はこの時なんとも思わなかった。いや、正確に言うと、疑問がわいた。なぜ人々が叫んでいるのか、なぜ走っているのか、そしてなぜ転ぶのか。何より、疑問だったのはその表情だ。今まで見たことがない表情をしていた。 なんだろう、この表情は。うーん、わからん。 少し思案していると、後ろから声が聞こえた。 「坊主。そこにいると危ないぜ」 そうして、その男は倒れた男に近づいていった。 「その人、どうしたの」 「死んでもらうんだよ」 「ふーん、でももう死んでるんじゃないの?」 さすがに物心つく頃になると死という概念くらいは知っていた。が、それがどういうことなのか、全く理解はしていなかった。死んでると思ったのは倒れた男が動かなかったからだ。 「いいや、こいつは死んでねえよ」 そういって、倒れた男の腹を殴った。 すると、なんと、これまで静かだった男から。ぐはっ…という声が小さく漏れたのだ。 そうか、コノヒトハマダシンデイナインダ。 じゃあ、何をもって死を認定するのだろう。正直、わくわくしていた。今までみたどんなテレビよりも、両親に連れて行ってもらった海やテーマパークよりもわくわくしていた。 もう一度さっきと同じ乾いた音が響いて、男は完全に動かなくなった。 俺を坊主、と呼んだ男が少しぼそぼそと喋って、不意にこちらを振り返った。 「ねえ、死んだの?」 俺がワクワクしながら尋ねると、 「おう、死んでるぜ。見るか?」 「うんっ」 たたっと早足で近づいた。 少し歪んだ顔が見えた。うーん、さっきの人達とも違う、新しいモノだ。なんだろう…。少し目線をずらすと、2箇所身体に穴が開いていて、そこからどくどくと赤い液体が流れていた。 「なあ、坊主。怖くないのか?」 「…?怖いってなに?」 「え、あー、そうだな、ソレをみて、なんとも思わないか?」 「…なんでだろうって思う」 「は?」 「さっき音がした時、この人がバターンってなって、それで他の人達が不思議な表情してた。見たことない表情だった。それで、この人も、見たことない表情してる…から、なんでだろうって」 「はー、お前そんなこと考えてたのか。変わってんなあ」 「そうなの?ねえ、なんでなのか教えて」 「お前、これを見てどう思う?」 「黒いなあって」 「そうか」 パンッと音がした。左肩が急に熱くなって目を向けたら赤い液体が流れていた。 あ、これ知ってる。転んだりしたときに出るやつだ。確か、チ、とかっていうんだよね。 「そっか。これ、チなんだね」 倒れている男を見ながら言った。 「ははは、そうかそうか。お前はの人間か。」 男は笑っていた。なんでこの人は笑っているんだろう? 男は近づいて、肩にガーゼをあて、治療した。今思うと頭おかしいんじゃないかと思う。子供を撃つなよ。かすっただけだったけどさ。
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