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3
◇◆◆◇
肉欲に塗れた日々は、のべつまくなしに続いた。
格子窓付きの座敷牢は気が滅入る。
せいぜいそこから外を眺めるしかないが、そっち側は山になっている。
雑木が生えていて、カラスや野鳥のさえずりが聞こえてくる。
季節は秋になろうとしているが、俺には関係ない事だ。
暑かろうが寒かろうが、年がら年中誰かに抱かれている。
俺の運命は生まれた時に決まっていた。
女郎の子として生を受けた時から、こうなる事は運命だったのだ。
父はただお武家様だと聞いただけで、どこの誰なのか、母は話そうとしなかった。
当然妻子がいる身だろうし、体面上の事があるから、外部に漏らしたくないんだろう。
武士には町人のような自由がない。
町中で女と不埒な振る舞いをするというのは有り得ない事だ。
唯一遊廓、陰間茶屋、女郎屋が遊べる場所だから、つい魔が差して……という事だろう。
要するに、俺は生まれてはいけない人間だったんだ。
生まれてはいけない人間が存在する為には、それなりの代償を払わなければならない。
それが今の俺だ。
◇◆◇
菖蒲を出てふた月が経とうとしている。
僧達は最初よりは来る回数が減ったが、そうは言っても、修行をする僧は若者ばかりだ。
みなすぐに欲求を持て余す。
たった今、朝の食事と風呂を済ませ、寝衣を着て座敷に戻ってきたが、布団は汚れたら替えてくれるので、今朝も綺麗な布団になっている。
壁に寄りかかって座っていると、扉の向こう側から足音が近づいてきた。
ドアが開いて2人僧侶が入ってきたが、鍵はかけられていない。
俺が逃げ出さず、素直に従っているので、それでだろう。
「雪之丞、また2人だ、楽しもうぞ」
門司ともうひとり玄海という僧だったが、門司はこれからする行為を微塵も感じさせぬような、爽やかな笑顔で言ってくる。
「はい」
俺は頷くだけだ。
2人は傍にきて座ったが、門司はあぐらをかいて座り、俺の腕を掴んでグイッと引き寄せる。
ふらついて胸板に抱かれたら、門司は息を荒らげて背中を撫で回してきた。
「拙僧は……お前が気に入った」
耳元で言ってきて熱い息がかかった。
「おい門司、あくまでも稚児としてだぞ、情を移すのはマズい」
玄海がすかさず注意を促す。
「わかっておる、しかし……稚児とは言っても生身の人間だ、私達の慰みものとして買われたのは……気の毒に思う」
門司は僧の中では一番穏やかな性格だから、俺に情けを感じているらしい。
その気持ちは嬉しいが、散々肉欲に塗れた俺に情けは無用だ。
「門司様……、俺は……かまいません、陰間として生きてきたのです、仏に仕える方々に抱かれるのは一向にかまいません」
門司の股間へ手をやり、布越しに硬く勃ちあがるイチモツを握った。
「うっ、雪之丞……」
「ほらな、雪之丞は悲観などしてはおらぬ、ははっ、では早速……」
玄海は笑い飛ばして言うと、寝衣の裾を捲りあげて俺の尻を晒した。
「白く柔らかな尻だ」
興奮気味に尻臀を揉んでくる。
「玄海……お前はただやりたいだけなのか? 雪之丞に対してなにも思わないのか」
門司は玄海に問いかけたが、俺は自分がやるべき事をやるだけだ。
着物の裾を開き、褌からイチモツを引っぱり出した。
「あ……、雪之丞」
門司が俺の事を思いやってくれるのは有難く思うが、これは俺の役目だ。
屈み込んでいきり立つ竿を口に咥えた。
「くっ……」
門司は体を強ばらせたが、深く頬張って舌を這わせていった。
「門司、な? 余計な事は考えるな、お前だってどうせやりに来たんだろうが、ほら、雪之丞」
玄海は俺の腰を抱え上げ、俺は四つん這いにさせられた。
「よし、通和散だ」
太い指で通和散を塗ってきたが、指が菊門の中にまで入り込み、ぐにぐに蠢いて淫らな気分に染めていく。
頭を揺らして屈み込み、門司のイチモツをしゃぶった。
「はあ、ゆ、雪之丞……」
門司は後ろに手をついて苦悶している。
「おい、先にいただくぞ」
玄海は俺の後ろに膝立ちして言うと、イチモツをあてがってきた。
ヌチッと先端が埋まり、菊門をこじ開けて中に入ってくる。
「は……、はあっ……」
硬い肉槍は体中を痺れさせる。
堪らなくなって口淫を中断した。
「これだけ毎日突いているというのに、この穴は相変わらず絡みついてくるな」
玄海は尻臀を持って腰を打ち付け、吐息混じりに言った。
「はっ、あっ、あっ」
ピタンピタンと音が響き、ヌチッ、ヌチュッと竿が出入りすると、意識がそっちに奪われて口淫できない。
「雪之丞、お前、そんなに……よいのか」
門司は悲しげな声色で言った。
「はい……、俺は……生まれながらに陰間です、だから本当に心配は……無用です」
俺が門司の優しさに応えるとしたら、門司を満足させる事だ。
「ほら、本人がこう言ってるんだ、では……遠慮なく出すからな」
玄海が激しく突いてきたので、体が揺れて前のめりになり、門司が体を支えてくれた。
「そうか……わかった、雪之丞」
俺は門司のイチモツを間近に見ながら、玄海の子種を受け止めた。
「んんっ、あぁっ……」
びゅるびゅると流れ込む液体は、何度受けても底なしに快楽を与えてくる。
「くうー、たまらぬ……」
玄海は何度も突いて種を放ち、イチモツをズルッと引き抜いた。
「はぁ、あっ……」
「雪之丞……」
門司に抱き寄せられて唇を吸われた。
そのまま布団の上に連れて行かれ、門司は俺の寝衣を脱がせて自分も裸になり、俺は布団の上で門司と抱き合った。
門司は熱のこもった熱い眼差しで見つめ、体をまさぐって愛撫してくる。
胸板の突起を舐め回し、股間の竿を握ってきた。
逞しい体をしている上に無骨な見た目をしているが、まるで恋人に接するようなやり方で、優しく菊門を掻き回す。
玄海が出した種が溢れ出し、グチュグチュ音がした。
門司はその音に触発されたのか、昂った様子で体を交えてきた。
口吸いをしながら腰を振る。
最初と比べたら随分上手になったが、それだけ沢山交わったと言う事だ。
俺は分厚い体を抱き締め、肉槍が突き入る感触に酔いしれた。
門司が辛そうに眉を歪めて種を放てば、俺も同時にイキ果てる。
「うっ、締まる……、雪之丞、わたしはお前の事が……」
門司は何か言いかけて力を無くし、体重をかけてかぶさってきた。
俺はなにを言わんとしていたのか、何となく分かった。
例えひとときでも、恋人気分に浸るのは悪くない。
それが陰間として生きてきた、俺の僅かな楽しみだ。
門司は名残惜しむように体を離そうとしなかったが、そうするうちに丹前がやってきて、慌てて体を離した。
「お前達、穢れを落としたら読経だ、さ、行け」
丹前は偉そうに命令する。
「はい、わかりました」
2人は丹前に頭を下げて急いで着物を羽織り、足早に座敷から出て行った。
丹前は2人にとって絶対的な権力者だ。
それは俺も同じだから、起き上がって布団の上に正座した。
「雪之丞、2人に可愛がられたのか?」
顎を掴まれ、上に向かされて聞かれた。
「はい」
「ふっ、そうか……、どれ、四つん這いになって尻をみせろ」
丹前は不躾に命じてくる。
「はい」
それでも、俺はただ従うのみだ。
「おお……、若いだけに量が多いわ」
指を菊門に入れて掻き回してきた。
「う、くっ……」
2人を相手にしたばかりだ。
体内はまだ燻っている。
「くくっ、お前にな、新しい薬を買ってきた」
楽しげに笑いながら言ったが、またあらたな薬を調達したらしい。
後ろでゴソゴソやっていたが、すぐに菊門に塗り込めてきた。
「んんっ、丹前様、薬は……勘弁願います」
俺は普通でも感じやすい体質だから、薬を使われると苦痛に感じる程の快感が湧き出してくる。
「なにを申す、これだけだと思ったら甘い、今日はこれを入れて過ごせ、わしは出かけてくる、わしが戻るまでこのままでいろ」
丹前は薬を入れた上で、嫌な事を言って張り型を入れてきた。
「んうう!」
「ふふふっ、外せないようにしなければな」
「あ、そんな……」
俺は後ろ手に両手首を縄で縛られた。
しかも、丹前は張り型の上に褌を巻いて抜け出さないようにした。
「こんな、どうかお許しを……外してください」
このまま放置するつもりらしいが、真剣に外して欲しかった。
「ふっふっ、よいか、わしが戻るまでに、新薬とイボ付きの張り型をじっくりと味わえ」
丹前は俺の願いを聞き入れず、座敷から出ていってしまった。
俺は布団の上で身悶えした。
「ううー、はぁ、はぁ」
快感が連続して襲ってくる。
手を動かしても、縄が食い込むだけだ。
それから後……悶え苦しんだ。
イキ果てて股間の竿が白濁汁を飛ばしたが、体内の疼きはおさまらない。
薬のせいで快感が延々続く。
誰か来てくれないかと思ったが、どうやら丹前に入るなと言われているようだ。
孤独な中で、絶え間なく襲う快感に悶絶する。
その苦しみは、鞭で打たれた時よりも酷く感じた。
布団の上で呻き、藻掻いて体を揺さぶったが、そうすると張り型が動く。
あがけばあがくほど、尚更苦しくなった。
どのくらい経ったのか、疲れ果て、意識が虚ろに霞み始めた時に丹前が戻って来た。
「雪之丞、ふふっ、気分はどうかな?」
傍に立って楽しげに聞いてくる。
「早く……抜いて……ください、く、苦しゅうございます」
俺はうつ伏せになった状態で悶絶びゃくじしながら丹前に頼んだ。
「よかろう」
丹前は後ろに行ってしゃがみこみ、褌を解いて張り型を引き抜いた。
「ぐっ……、あ、ああっ……」
張り型の突起が菊門にひっかかり、尻がビクンと震えた。
「ほっほっほ……、これは愉快だ」
丹前は面白がってわざとひっかかるように抜いていき、全部抜け出すまで尻がビクビク痙攣した。
「薬は中に染み込んだ筈だ、雪之丞、お前の中に入れてやりたいが、その前に今一度薬を仕込んでやる」
また薬……。
ようやく楽になれると思ったのに、丹前は菊門に何か筒状の物を突き刺した。
「っぐっ……、なにをなさいます」
体を捻って振り向いて見れば、座り込んで尻穴に細い竹筒を差し込んでいた。
ひんやりとした液体が流れ込んでくる。
「出かけたついでにな、懇意にしてる薬屋に立ち寄った、これはある植物を煮だした汁で、かなりの効き目があるらしい、お前には教えてやるが……ご禁制の品だ」
丹前はご禁制の品と言ったが、ご禁制と聞いたら……ひょっとして阿片では?
女郎の椿が以前話した事がある。
体を交える際に阿片を使うと異常に興奮すると。
その話を思い出していたが、じっくりと考える余裕はなかった。
菊門が疼き出し、腹の中もジリジリと焼け付くように熱くなってきた。
「はぁ、はう、ぁ、丹前様……」
自分でも異常な状態だとわかっているのに、気分が急激に昂って目の焦点があわなくなり、頭の中が淫らな欲に支配されていく。
「やはり液体は効き目が早いのう、よしよし、縄を解いてやる」
丹前は縄を解き、俺はようやく自由になれた。
けれど、欲求が抑えられない程高まっている。
丹前を相手に、自分から求めるなど有り得ないが、耐え難い疼きがそうさせた。
俺は這いつくばって丹前の方へ向くと、股間をまさぐった。
「はははっ、さすが妙薬だ、雪之丞、構わぬ、口淫をいたせ、ほら」
着物が捲られて褌が露わになり、イチモツが布を押し上げている。
「は、はい、はぁ、はぁ」
興奮して息が乱れ、イチモツを引っ張りだして夢中でしゃぶった。
「おー、これはまた凄まじい、餓鬼のように食らいついておる、雪之丞、良いぞ、それでこそお前だ」
丹前は背中を撫で回して褒める。
ジュボジュボと音を鳴らして頭を揺らしたら、髷がズレて髪がバサバサになったが、今はそんな事はどうでもいい。
「おお、たまらん、雪之丞、自らわしのモノを入れてみよ、後ろに向いて尻を出せ」
丹前が言ってきたので、即座に指図に従った。
四つん這いになって丹前の股間へ尻を下げていき、先端が菊門に触れたら、待ち侘びたように腰を落とした。
「んん、あうっ……!」
猛る肉槍がズブリと突き刺さり、腕をついて体をそらした。
「はあ、肉穴がわしのを咥え込んでおる、さあ、好きなだけ食らうがいい」
丹前は指で結合部を撫で回して言った。
俺は完全に常軌を逸していた。
快楽を得る為にがむしゃらに腰を振り、丹前のイチモツに悶え狂った。
硬い肉槍が体内を突く度に快感が高まってきた。
「はぁ、はぁ、あっ、あっ」
「わしのいう事を聞けば、お前は好きなだけ快楽を得る事ができる、おおー、そろそろ出るぞ」
丹前は尻臀を両手で持ち、上下に揺らして言った。
俺は淫魔に取り憑かれ、体内を摩擦する硬い雄に囚われていた。
「よし、そーら、種を入れてやる」
丹前は尻を引き寄せてイチモツを突き入れた。
竿がドクンッと跳ねて子種を飛ばしたら、股間で揺れる竿が白濁した体液を漏らした。
「いきおったか、はあ、雪之丞、来い」
丹前は後ろから抱き締めてきた。
俺は膝をついた不安定な体勢で抱かれたが、イチモツは深く突き刺さって子種を注いでいる。
「ふぁ、はぁはぁ、あぁ……」
大嫌いな相手なのに、体中に快感が満ちていった。
「雪之丞よ、この寺では躊躇する事はない、この淫らな肉体で、引き続き若い奴らの穢れを吸い取ってやるのだ、わかったな?」
丹前は言い聞かせてくる。
「は、はい……」
俺は息を乱して頷いた。
この強烈な快感の前では、好きも嫌いも、そんなものはどうでもよかった。
丹前は出すだけだして事を終えた。
使用済みの張り型を隅に置いたままにして、身なりをなおして座敷から出て行った。
しかし、薬はまだ効いている。
興奮状態がおさまらず、俺は自ら張り型を手に取っていた。
布団の上にうつ伏せになり、手を後ろにやって菊門に張り型を押し込んだ。
「んんう、はああっ」
強烈な快感が走り、体がビクンと強ばった。
誰かが入ってきた気配がしたが、張り型を入れて快楽に浸っていた。
「これはまた……、丹前様は薬でも使われたらしいな」
「ああ、にしても……これほど毎日貫かれておるのに、まだ欲が尽きぬらしい」
やって来たのは若い僧2人だったが、門司と玄海とは別の僧だ。
2人は俺のそばにやって来ると、ひとりがしゃがみこんで張り型を抜き去り、尻を抱えあげる。
「そんな物より、こっちがよかろう」
僧は俺を見て昂ったらしく、四つん這いになった途端、イチモツが菊門を貫いてきた。
「っ、ああーっ!」
体はその刺激を求めていた。
激しく突かれて喘ぎ声をあげたら、もうひとりが前にきてイチモツを差し出す。
腕を突っ張って揺れる体を支え、猛る竿を頬張った。
「これはキツい薬を使ったようだな、いつもに増して淫らだ」
前に立つ僧は俺の頭を撫で回して言ったが、後ろの僧は交わりに夢中になって腰を押し付けてきた。
「ああ、らしいな、中がトロトロで堪らぬ」
肉槍が脈打って生温かな体液を注いでくる。
「雪之丞……、わたしもイクぞ」
前の僧は俺の頭を押さえつけ、イチモツを喉奥に突き入れて種を放った。
「んぐっ……」
俺は異常な興奮の中で、ぬめる体液を貪るように飲んだ。
2人は心ゆくまで子種を放ち、それぞれにイチモツを引き抜いた。
用が済んだら、2人は裾を直して座敷を出て行ったが、阿片と思しき薬はまだ効果を持続している。
そんな状態の中で、またしても3人僧がやってきた。
3人は裸になって即体を交えてきたが、俺はひとりに跨って肉穴にイチモツを咥え込み、口にもイチモツを頬張った。
その夜、口伝てで俺が淫猥になっているのを聞いたのか、僧達が途切れる事なくやって来た。
俺は僧達に次々と抱かれたが、あまりの興奮にしまいには気を失ってしまい、そのまま朝を迎えていた。
目覚めた後で夕べの事を思い出そうとしたが、記憶が途切れ途切れになっている。
椿が話した事は本当だったらしい。
阿片は人を狂わせる……。
◇◆◇
阿片を使われるのは嫌だったが、更に数日後の昼過ぎ、丹前は珍しく俺を外に連れ出した。
四半時ほど歩いたところで、見知らぬ屋敷の門をくぐった。
そこは変わった作りの屋敷で、広い敷地に小さな小屋がいくつも建っている。
丹前はそのうちのひとつに入って行き、俺も続けて中に入ったが、中には輪になって座る男達がいた。
「お待たせしました、これが雪之丞で御座います」
丹前は俺を男達に紹介する。
もうなんとなくわかってきた。
きっとこの男達の相手をしなければならないんだろう。
「ほお、なかなかの美形ではないか」
みな30は超えていると思われるが、僧のような坊主頭もいれば、髷を結っている者もいる。
「ふふふっ、きっとお気に召すと思います、さ、雪之丞、尻を出せ」
丹前は笑顔で言ってきたが、また阿片を使うつもりだ。
「あの……、あの薬は勘弁してください」
薬などなくても相手をする。
「駄目だ、はよう、こちらへ向け」
しかし、どうしても使いたいらしく、強引に後ろに向かされた。
「あっ……」
裾を捲られて竹筒をあてがわれ、菊門に冷たい液体が流れ込んできた。
「んんっ」
「丹前殿、いきなりそんなものを見せられたら、たまりませんな」
男のひとりが俺を見て言ったが、好色な顔でニヤついている。
「ははっ、この薬はよく効く、さ、できた、ではまずはあなた様に……」
丹前は竹筒を引き抜くと、背中を押して俺を好色な顔をした男へ渡した。
「うわ……」
男の懐に倒れ込んでしまったが、男はニタニタしながら抱き締めてきた。
「では皆さん、お先にやらせて貰いますよ」
荒い息が首にかかり、帯を解かれて着物をスルリと脱がされた。
俺は下帯をつける事を禁じられ、薄手の着物を一枚着ているだけだ。
あっさり脱げ落ちて裸になり、男は肌に貪りついてきた。
「んっ……」
薬は早々と効き始めたらしい。
男の舌が胸の突起を舐め回し、菊門がひくついて注入された薬が漏れ出した。
「さ、我々は一杯やって楽しみますか」
他の男達は酒盛りを始めたようだが、全部で5人いる。
丹前は静かに小屋から立ち去った。
俺は男に口吸いをされ、唇を闇雲に吸われて尻を揉まれた。
「あ、あぐっ……」
ヌルッと舌を絡められて思わず声が漏れたが、阿片が効いたのか……異様に気分が昂ってくる。
力が抜け、なるようになればいい……とそう思った。
男は鼻息荒く裾を捲ると、イチモツを引っ張り出した。
「わかっていると思うが、お前は私達に買われたのだ、早速だが交わるぞ」
俺に言ってきたが、俺は抵抗するつもりはない。
足を開いて男の腰を挟み込み、座った体勢でイチモツを受け入れていった。
そこは薬で濡れているから、男のイチモツがズブリと体内を抉りあげた。
「はう、あぁっ……!」
「よしよし、ハマったぞ、どれ、中の具合は……、おお、丹前の言った通り、竿に絡みついてくる」
男は確かめるように2、3度突きあげ、本格的に動き出した。
「あう、はぁ……!」
「これは……なんとも淫猥な光景だ」
周りの男らが2人寄ってきたが、酒が入ってるせいで遠慮がない。
俺の真後ろにかがみ込み、結合部を覗き見ている。
「ちょっと触らせろ」
見物人は興奮気味に尻臀を揉んできた。
俺は客慣れしているが、1度に5人はさすがにちょっと辛い。
しかし、阿片が意識を狂わせる。
快感を得る事しか頭になく、自ら腰を動かしていった。
「おお、やる気十分だな」
男は尻を持って荒々しく突いてきた。
快感が頭のてっぺんにまで響き渡り、無我夢中で腰を振ったら、男は俺を抱き締めて下から思い切り貫いた。
子種がびゅるびゅると注がれてくる。
「ふ、ぁ、あぁっ……」
脈動を感じたら、体の中が蕩けていった。
男は息を荒げて絞り出すように種を放っていたが、尻臀を揉んできた男が『早く代われ』と急かした。
俺は後ろにいた男に抱かれ、その場で四つん這いにさせられた。
「淫乱な稚児よ、わしが新たな種を入れてやる」
男は尻を持ってイチモツを突き入れてきた。
「っああっ!」
思わず背中を反らし、前に倒れ込んだが、その男は坊主頭で僧と思しき男だった。
男は猛る肉槍を容赦なく突き込み、俺は畳に顔を擦りつけて快楽に痺れた。
「お前、口淫もできるだろう」
けれど、前にやってきた男が顎を掴んで顔を上げさせる。
よろよろと腕を立てたら、口にイチモツをねじ込んできた。
「あ"……、ぐっ」
竿は男臭い匂いを放って淫液を垂らしていたが、それはかえって興奮を煽った。
「薬のせいか? 飢えたようにしゃぶるんだな」
男はニヤニヤしながら言ったが、俺は淫欲に取り憑かれている。
後ろから突かれて益々昂り、竿を舐めしゃぶる事に没頭した。
周りから手が伸びてきて、体をあちこちをまさぐった。
頭の中はフワフワ霞んでいたが、体を触られると敏感に反応してしまう。
口の中に生臭い種を出されて貪るように飲んだら、後ろの男がイチモツを突き入れて種を放った。
「これは楽しい、こんなに淫らな童子は見た事がない」
それからは色と欲に塗れ、5人のイチモツを口と体内で受け止めた。
男達も裸になり、みな好きなように体を触ってきた。
ひとりに貫かれながら、誰かの手に扱かれて子種を放ち、誰かと口吸いをして……誰かに跨った。
阿片は恐ろしい。
なんの躊躇いもなく、俺は淫行にのめり込んでいた。
夕刻の鐘が鳴る頃、俺はやっと解放された。
菊門からは子種が溢れ出している。
5人が居なくなったら丹前が迎えに来たが、俺は裸で畳に突っ伏していた。
「雪之丞、ようやった、これも寺の繁栄の為だ、お前はまだまだ稼げる」
丹前は満足げに言って俺に着物を羽織らせてくれたが、この優しさは、これからも再び体を売る羽目になる事を暗示している。
◇◆◇
その夜、丹前はすこぶる機嫌が良かった。
おそらく、あの5人から多額の金子を受け取ったに違いない。
丹前は『今夜はゆっくり休め』と言い、若い僧達もやって来なかった。
仕事をした褒美のつもりか、俺はつかぬまの休息を得る事ができた。
ひとりきりで何もせずに静かに過ごす。
そんな事は茶屋にいる時も一度もなかった。
そのせいか、楽な筈なのに、どこか物足りないような気がする。
毎日毎日、誰かに抱かれて過ごす。
それが当たり前になっているからだ。
外で虫の声がするが、そろそろ本格的な秋が来てやがて冬になるだろう。
茶屋では……冬になれば厚手の着物を着て、羽織を羽織り、座敷には火鉢が置かれていた。
暇に任せ、ふと昔の事が頭に浮かんできた。
茶屋で客をとり始めたのは10才の終わり頃だったが、店に出るまでに体を慣らす。
その役目は店で働く男衆が担うのだが、俺は男衆に抱かれ、売り物として店に出せる体に変えられた。
僧達は俺を稚児の代わりにしているが、もし本物の稚児だとしても、本当に穢れが浄化されるとは思えない。
仏の道は女人禁制だから、都合のいいように理由をつけて欲求を満たしているだけだ。
ただ、俺には僧達を責める資格はない。
体を売り、快楽と金を得ていたのは事実だし、今日も阿片に溺れて自ら淫らに振舞った。
穢れているのは自分自身に他ならない。
「はあ……」
「雪之丞……」
ため息をついたら、小さく名を呼ぶ声がした。
「ん……」
どこから聞こえたのかわからず、キョロキョロしていると、窓の格子の向こう側に人影が見える。
行灯は一応置かれているが、つけてないから月明かりが頼りだ。
「俺だ、喜助だ」
声を潜めて言ったのは喜助だった。
「喜助さん……」
驚いてすぐに窓のそばに走り寄ったが、格子が邪魔でよく見えない。
でも……もう2度と会えぬと思っていただけに、喜びで胸がいっぱいになった。
「お前、坊主に身受けされたんだな」
「はい」
「こんな座敷牢に閉じ込めて、どうせ坊主共の相手をさせられてるんだろ?」
「はい」
「なにが仏だ、こんな事……許せねー」
喜助は腹を立てているが、俺はどう転んでも同じ事だ。
「あの、俺はいいんです、どうせこういう生き方しかできない、それより何故ここへ?」
それよりもどうして喜助がこんな所へやって来たのか、それがわからない。
「こっから出してやる、今坊主共は向こうに集まってる、何か儀式をやってるらしい、逃げるなら今だ」
すると、喜助は思いもよらぬ事を言い出した。
「逃げるって……」
何故喜助が俺を助けようとするのかわからないが、喜助は俺が戸惑ってる間に、懐から道具を出して格子を外し始めた。
「待ってな、こんなもんちょろい」
金属の棒のような物を繋ぎ目に差し込むと、格子がガタッと音を立てて外れた。
「あ……、あの」
いきなりの事に混乱していたら、喜助は手慣れた様子で格子を取り除き、俺の方へ手を差し出してくる。
「さ、来い、受け止めてやる」
来いと言われても、逃げて一体どうするのか……。
「いや、でも……、逃げたら丹前様は絶対俺を探すだろうし、喜助さんに迷惑がかかる」
丹前は金の仏像を売り払って俺を買った。
そんな事をしたらマズイに決まっている。
「馬鹿野郎、たかが坊主ぐれぇしれてる、さ、早く来い、雪之丞、俺と一緒に逃げよう」
だけど……『一緒に』そう言われて心が動いた。
「わかり……ました」
なにがなんだかわからないし、どうなるのかもわからないが、喜助と共にいられるなら……一緒にいたい。
「よし、窓に上がってこっちに飛び降りろ」
「はい……」
着物の裾が捲れて下半身が露出したが、そんなのを気にする暇などなかった。
窓枠に上がって喜助の手を掴み、そのまま飛び降りた。
「わっ……」
「おっと……、へっ、お前は軽いからよ、よし、さっさとずらかろうぜ」
喜助が受け止めてくれたが、背中を押して促してくる。
俺は何も持たずに体ひとつで寺から逃げ出した。
夜という事もあって邸内には人気はなく、すんなり寺から出る事が出来た。
けれど、どこへ行くつもりなのか……。
喜助について歩いたが、寝衣一枚じゃ肌寒く感じる。
「喜助さん、一体どこへ……」
腕で体を包み込んで聞いた。
「おお、賭場の奥にある安宿だ、坊主には縁がねー場所だからな」
「そうですか……」
確かに、さすがに僧侶はそういう場所には近寄らないだろう。
「ああ、それだけじゃ寒いな、ちょっと待て、ほら、これをかけてな」
喜助は合羽を外し、俺に羽織らせてくれた。
「すみません……」
優しさが身に染みて嬉しかったが、やっぱり疑問に思う。
「あの、菖蒲ではただ話をするだけだったし……、俺を寺から連れ出して……何故そこまで俺の事を案じてくれるのですか?」
「ああ、ま、そいつはいずれわかる、深く考えるな、お前を座敷牢なんかに閉じ込めちゃおけねぇ、俺はただのお節介焼きだ」
喜助は適当な事を言ってはぐらかしたが、いずれわかるとも言った。
「いずれ……ですか」
どんな訳か知らないが、こんな事までされて……惚れるなと言う方が無理な話だ。
夜道をひたすら歩き、町はずれの賭場へやってきた。
一見小さな店屋に見えるが、喜助に続いて暖簾をくぐったら、帳場の向こう側にがらんとした座敷があり、更にその奥へと続く扉がある。
喜助は座敷に上がったので、俺もついて行ったが、奥の扉は二重扉になっていた。
外側の木の引き戸を開けると、障子が現れた。
喜助はそれを開けて中に入ったので、俺も後ろにくっついて座敷へ入った。
中は賽子を振るツボ振りがいて、盆台を囲むように客が座っている。
『丁』『半』と言った掛け声が響く中、わきに座る如何にもヤクザ者らしき男がこっちを見た。
「おお喜助、なんだ、遊んでくか?」
男は喜助に向かって聞いてくる。
「いや、ちょいと訳ありでな、今はそんな暇はねー、で、銀次郎、ここの裏にある座敷をひとつ、しばらくの間貸して貰いてぇ」
喜助は男を銀次郎と呼んで宿の事を頼んだ。
「ああ、そうかい、裏の座敷なら空いてるぜ、好きに使いな、で、おめぇ、その隣に連れてるのは一体誰なんだ?」
「おお、詳しいこたぁ話せねぇが、こいつは寺に監禁されてたんだ、座敷牢にな、だからよ、俺が助け出してきた、坊さんは賭場には縁がねーだろ? だからよ、身を隠すのにちょうどいいと思ってな」
喜助はざっくりと事情を説明した。
「座敷牢? おいおい、生臭坊主共は一体なにをやらかしてたんだ? 見たところ……まだわけぇ、ひょっとして……稚児だとか言って、慰みものにしてたんじゃねーよな?」
銀次郎さんは勘がいいらしい。
たったあれだけの説明でほぼ言い当てた。
「ま、そんなとこだ、あのよ、ここじゃあれだ、ひとまず座敷に行くわ、話がしたけりゃ来てくれ」
「おう、わかった」
「雪之丞、ついて来い、こっちだ」
「はい」
手招きされ、喜助の後について賭場から外に出た。
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