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◇◆◆◇ 杉本さんのマンションに到着し、駐車場にとめて車から車椅子に乗り換えた。 そこからは車椅子を押して貰って部屋に行った。 エレベーターで6階に上がり、部屋の玄関に入ったが、段差がある。 さほど高くはないので、杉本さんに抱えて貰い、無事乗り越えて部屋の中に到着した。 好奇心丸出しなのはマズい……と思ったが、つい中を見回していた。 サイドボードに棚、ソファーにテーブル、シンプルな部屋だが、壁に額縁入りの代紋らしき物が飾ってある。 なんか……びびった。 「おお、俺が支えてやるからよ、ソファーに座りな」 「あ、はい、すみません……」 見た感じ、杉本さんも独身できてるようだ。 車椅子をソファーの横に動かしてくれたが、『いっつも車椅子じゃ疲れるだろう』と言って、体を思い切りハグするようなかたちでソファーに座らせてくれた。 ちょっとドキドキした。 やっぱり……完璧にゲイかもしれない、いいのか? 俺。 「へへっ、ま、座っててくれ、なんか飲みもん出すわ」 杉本さんは愛想よく笑ってキッチンの方へ歩いて行く。 「すみません……」 なんだか頭を下げてばかりだが、この人もヤクザとは思えない位優しい。 「おお、あんな、冷蔵庫に珈琲があるんだが、つめてぇけど……いいか?」 冷たい物は胃腸によくないんだが、せっかくグラスについでくれたのに、わがままを言ったら悪い。 「あ、はい……」 「よーし、じゃ、どうぞ、へへっ」 杉本さんは俺の前にグラスを置いて隣に座ってきた。 なんかやけに近いが、気のせいだろう。 せっかく招いてくれたんだから、なにか話さなきゃ。 「っと……、杉本さんは彼女とかいるんですか?」 「いーや、いねぇ、悲しいだろ? 皆嫁やガキがいるのによ、小川と俺はまだ独り身なんだ」 「そうですか、そういうのは出会いがないと、なかなか難しいですね」 「あんたはどうなんだ?」 「俺は無理です、実は……こんな体になる前に彼女がいました」 「おお、バイク事故だったな、で、女とは別れたのか?」 「はい」 「ふーん、その彼女ってやつは、体が不自由になったからって、あっさりバイバイできるんだな」 「いえ、別れようって言ったのは俺からです、俺は子供も持てないし、その……言いにくい事なんですが、SEXできないんで、やっぱ可哀想です」 「勃たねーのか?」 「はい」 「本当に無理か?」 「無理です、下半身の感覚がないんで……」 話題が下ネタになってしまったが、話しながら珈琲を飲んでるうちに、胃から十二指腸の辺りでイヤーな感じがし始めた。 俺は辛うじて十二指腸辺りまで感覚がある。 だから下痢をした時は助かるのだが、ここは杉本さんちだ。 車椅子からトイレに移動する際に介助して貰わなきゃならない。 「そうか、そういう事なら仕方ねーな」 最早話どころではなくなり、手のひらに冷や汗をかいていた。 「あ、あの……」 杉本さんとはまだ付き合いが浅いし、トイレだから余計に言いにくい。 「ん、どうした?」 だけど、言わなきゃ……もし漏らしたら、もっと迷惑をかける事になる。 「あの、トイレに行きたいんですが……」 思い切って言った。 「おお、そんな事か、そのー手伝やいいのか?」 杉本さんは真横から顔を覗き込んで聞いてきた。 「そうなんですが……、うちは家のトイレは俺がひとりでできるようにしてます、会社のも手すり付きで……、そういうのがない場合、支えて貰わなきゃならないし、はっきり言って……慣れてない人は嫌だと思うんです、だって……他人がトイレするとか、そんなのは関わりたくないと思うし、でももし漏らしたら……ヤバイし」 この体はなにかと手がかかる。 そこをなんとかわかりやすく説明した。 「わかった、手伝ってやる、心配するな、そんなこたぁ知れてる」 杉本さんは快く手伝ってやると言って、言ったそばから立ち上がり、俺をガシッと抱いて車椅子に乗せてくれた。 そのまま押して貰ってトイレに向かったが、俺は車椅子の横にさげたポーチを取った。 中には滅菌済みの排尿、排便セットが入っている。 「んん、そりゃカテーテルか、ひょっとしてそれをナニに入れんのか?」 中身が透けて見えるので、杉本さんは頭上から俺の手元を見て聞いてくる。 「そうです、恥ずかしい話ですが、ついでに尿も出しておかなきゃ漏らす可能性があるんで」 「別に恥ずかしかねー、誰だって小便や糞を垂れるんだ、どんだけキレーな姉ちゃんでも、生きてる以上おんなじだからな、しっかしよー、カテーテルか、なんかエロいな」 そう言ってくれたら気が楽になるが、エロいって言葉がちょっとひっかかった。 「エロいんですか?」 カテーテルとそういう事を結びつけて考えた事がなかったので、気になって聞いてみた。 「あ、わりぃ……、つい余計な事を考えちまってよー、へへっ」 どうやら、杉本さんにとってカテーテルはエロい道具らしい。 まぁーヤクザだし、そっちには色々と長けてるんだろう。 そんなのは気にするほどの事じゃない。 トイレにやって来て、杉本さんに抱えて貰ってトイレに座ったので、自分で下をずらそうとした。 「おい待て、俺がやるわ」 すると、杉本さんが手を出してきた。 「あの、自分で出来るので……」 その位ならなんとか自分でやれる。 「いいんだよ、やってやる、恥ずかしがらなくていいぜ、俺はな、色んなことを体験してきた、だからよ、こんな事は大した事じゃねー」 杉本さんは大した事じゃないと言ってくれたが、とにかく急がなきゃ、さっきから腹がギュルギュル鳴ってマジでヤバイ。 「あ、あの……じゃあ」 俺は脱ぎ着しやすいように、ウエストにゴムが入ったズボンをはいている。 「よっしゃ、脱がすぞ、おりゃーっ!」 戸惑っていると、杉本さんが気合いをいれてズボンとパンツをズラし、足から引き抜いた。 全部脱がなくてもいいんだけど……。 ちょっと戸惑ったが、鳥肌が立ってきた……もう出そうだ。 「すみませんが、外に……出ていてください」 おっさんが排泄するところなんか見せたくない。 焦って訴えた。 「構わねー、ぶちまけろ」 なのに、へっちゃらで出せと言う。 「え、でも……、あ、あ……」 言ってるそばから便が勝手に出始めてしまった。 慌てて後ろに手を回し、レバーを引いて水を流そうとした。 杉本さんに不快な思いをさせたくないが、無理に体を捻ったら倒れてしまう。 「ほら」 もたついてると、杉本さんがすっと手を伸ばして水を流してくれた。 「すみません……」 俺は介助される事に慣れてしまってるが、杉本さんは介護士や看護師じゃなくヤクザだ。 ヤクザにトイレの介助なんかして貰うなんて、それ自体驚くような出来事だが、ものすごく恐縮する。 「だからよ、さっき言っただろ? 気にすんな、で、ウォシュレット出すが、大丈夫か?」 杉本さんはなんでもない顔をして、更に手伝ってくれようとする。 「はい……大丈夫です」 ウォシュレットを作動させて貰い、洗い終わったら自分でケツを拭いた。 便はなんとか乗り越えたが、次は尿を出さなきゃならない。 「あ、あの、尿をだしたいので、外に……」 排便するのを間近で見たのに、これ以上見たくないだろう。 「おお、カテーテルか、いやいや、全然構わねー、是非やってみせてくれ」 ところが、やたら興味ありげに言ってくる。 さっきエロいとか言ってたし、ひょっとして見たかったりするのか? 「わかりました……」 どのみちやるしかないし、ポーチから除菌ウエットティッシュを出して手を拭った。 その後、ビニールで個包装されたカテーテルを取り出して、付属のジェルを塗る。 そしたら、ナニを掴んでカテーテルを尿道に挿入していった。 「おっ、おおー、痛そうだ……、見てるだけでこっちまでナニが痛くなってくる」 杉本さんは大袈裟な事を言って顔を顰めたが、俺は感覚がないからなんともない。 「あのー、俺は感覚ないんで、全然平気です」 元気な時はカテーテルの経験がないから、今となってはわからないが、本来カテーテルを挿入するのは痛いのかもしれない。 こうして尿道に挿し込み、カテーテルが膀胱へ到達したら自動的に尿が出始める。 「おお、出たな、感覚がねーから痛くねーのか」 杉本さんは興味津々で観察している。 大抵の人は出来るだけ下の事には触れないようにしてくるが、小川さんも杉本さんも好奇心旺盛だ。 俺は恥ずかしさはあるが、むしろ、そんな風に素直な反応を見せてくれる方がいい。 チョロチョロと排尿する間、杉本さんはずっと見ていた。 「なあ、あんた、そのナニだが、本当に駄目か試してやろうか?」 排尿し終わってゴソゴソと片付けをしていると、杉本さんが突拍子もない事を言ってきた。 「えっ? 試すって……」 「俺が弄ってやる」 「ええっ……」 弄るって……一体どういう意味なんだ? リハビリの類いだとしても、腕や足じゃないんだから、揉みほぐすって意味じゃないだろう。 「あのー、それはどういう意味なんでしょう?」 聞きにくいけど、聞いてみた。 「へへっ、俺な、男女どっちもいけんだよ、だから任せな」 「え? あ……えぇ」 杉本さんは笑顔でさらっと言ったが、俺はポカーンと口を開けて杉本さんを見上げた。 男もいけるって事は……ゲイなのか? いや確か……バイ・セクシャルっていうんじゃなかったか? 思わぬところで爆弾発言を聞き、びっくりして頭の中で色んな事が飛び交ったが、とにかく、使い終わったカテーテルを専用のゴミ袋に入れた。 「それ、捨てるんだったら貸しな」 杉本さんは手を出してきたが、こんな物を渡すのは躊躇する。 「え、でも……」 「いーから、かせ」 「あ……」 渡せずにいたら手から奪われた。 杉本さんはゴミ箱に捨てに行き、すぐに戻ってくると、俺を支えて車椅子に乗せてくれたが、俺はまだズボンとパンツを穿いてない。 「弄るからよ、着る必要ねぇだろ、服は俺が持ってくわ」 「え、あ、でも……」 下だけすっぽんぽんはかっこ悪いが、杉本さんはズボンとパンツを掴むと、車椅子を押してくれる。 ……本気でやるつもりらしい。 「あの、弄るって言っても、そんな事して貰っていいんでしょうか?」 俺は戸惑いまくっていた。 「いいんだよ、あんたはそういうのは嫌か?」 「あっ、いえ、別に嫌とかそういうんじゃ……」 俺はつい最近になってそっちに目覚めたと感じている。 本当は小川さんの事が好きなんだけど、杉本さんもタイプだし、そんな人にそんな事を言われたら……やって貰いたいって思ってしまう。 「そうか、じゃやる前に1回綺麗に拭いた方がいいな、バイ菌入ったらあれだし、俺も手ぇ洗って歯磨きする、ちょい待ちな」 「あ……、はい」 杉本さんは俺に言って掴んだ服をソファーに放り投げ、キッチンへ行ってゴソゴソしていたが、やがて絞ったタオルを手に持って戻ってきた。 「ほんとならシャワー浴びて、もっと本格的にやりてぇんだが、さすがに入浴の介助は自信がねー、だからよ、おしぼりで拭いとくわ」 手にしたタオルで俺のナニを拭いていったが、平然とやってるし、バイ・セクシャルなのは真実らしい。 というか、さっき本格的って言ったが……それはSEXの事だろうか。 「いや、あの、でも……いいのかな?」 俺はそっちには目覚めたばかりだし、興味はあるけど……いざやるとなると腰がひける。 「いいんだよ、俺はよ、最近男はご無沙汰だった、あんた色白だしよー、顔も好みだ、だから逆にやらせろって話だ」 「あ、っと……」 凄い気軽に言ったが、こういう事をする時ってそういう軽い乗りなのか? 俺にはよくわからない。 「よし、できた、んじゃソファーでやろう」 杉本さんは乗り気で言ってくる。 「は、はい……」 期待と不安が入り交じり、ゴクリと唾を飲み込んだ。 俺は杉本さんに介助されて再びソファーに座った。 「へへっ、な、あんたは男とやった事ねーよな?」 杉本さんは隣に座り、俺の肩を抱いて聞いてくる。 「ないです」 「そうか、けど普通ならビビって拒否るよな? 拒否らねーって事は、興味はあるんだろ?」 「はい……」 素直に頷いたが、そういう事を話すのは排泄を介助されるよりももっと恥ずかしい。 「よしよし、じゃあ、初めにキスからいくぜ」 なのに、杉本さんはグイグイ押してくる。 キスすると言われて顔がかぁっと熱くなった。 当たり前に男とキスするのは初めてだし、カチコチに固まっていると、顔が近づいて唇が重なった。 ヤバい位心臓がドキドキする。 キスなんて何年ぶりになるか、遠い昔のように感じる。 杉本さんは唇を吸いながら、片手で俺の体に触れてきた。 胸板を弄って乳首を摘んできたが、男同士も男女と同じような事をするらしい。 「やべ……興奮してきた」 杉本さんはキスをやめて耳元で呟いたが、低い声が鼓膜に響いて背中がゾクゾクした。 「す、杉本さん……、変な気分です」 心臓はドキドキしっぱなしだし、乳首を弄られてやり場がない程昂ってきた。 「おお、だったら上も脱いじまえ、エアコンきかせてるからよ、寒くはねー筈だ」 「はい」 上は自分で脱げる。 長袖のトレーナーを脱いでいくと、杉本さんが引っ張って手伝ってくれた。 「へっ、やっぱり肌がキレーだ」 俺は全裸になり、一層恥ずかしくなった。 その上めちゃくちゃ緊張する。 顔が火照りっぱなしだったが、杉本さんは胸板に顔を寄せて乳首を口に含んだ。 「んっ……」 上半身は普通に感覚がある。 艶めかしい感触に肩がビクッと震えた。 「なあ小谷さん、操って呼びてぇ、あんたも俺の事を満(みつる)って呼んでくれ、いいか?」 杉本さんは胸の肉を揉んで聞いてくる。 「は、はい、わかりました……、満さんでいいんですね?」 返事をしながら、俺は奇妙な感覚に襲われていた。 下半身がダメになった分、上半身が敏感になってるような気がする。 「ああ、構わねー」 ナニはやっぱり勃たなかったが、杉本さんに乳首を吸ったり舐めたりされると、上半身にじわっと淫靡な快感が走る。 「んあ……」 不意に強く吸われ、変な声が漏れた。 「操、あんた、乳首感じるんだな、ただ、問題はこっちか……」 杉本さんは萎えたナニを握ってきた。 「乳首勃ってんだから、こっちも勃つんじゃねーか?」 手で掴んで扱き始めたが、竿はふにゃふにゃのままだ。 「そこは……、多分無理です」 人によっては勃つ人もいるらしいが、俺のナニは事故と共に死んじまった。 「そうか? じゃ、もうちょい試してみっか」 「え、あっ……!」 杉本さんはいきなり屈み込み、ナニをパクっと咥えた。 一瞬慌てたが、俺は……なにも感じない。 それでも杉本さんは行為を続ける。 俺はその光景を見下ろしながらふと思った。 杉本さんは石丸組の幹部だ。 そんな人にこんな事をして貰っていいのか? 壁には掛けられた代紋が目に入り、急に及び腰になってきた。 「あ、あの……、もう……その位で」 「おっしゃー! へっ、俺のテクが勝ったぜ」 声をかけたら、杉本さんはガバッと起き上がって得意げに言った。 「ん? あ……、ああーっ!」 何かと思って股間を見たら……奇跡が起きていた。 死んだと思ったナニが、勃っている。 「やっぱ勃つんじゃねーか」 ──信じられない。 「こんな……嘘みたいだ……」 もう見ることはないと諦めた勇姿が、股間にある。 俺は喜びと感動で胸がいっぱいになった。 「勃起したの……ほんと久しぶりです」 嬉しさのあまり、目がうるうるしてきた。 「そうか、へへっ、俺が誘ったからよ、どうかと思ったが、そんなに喜んでくれりゃ、ちょっかいだした甲斐があるってもんだ」 「あの俺、正直言うと……自分がゲイじゃないかって気づいたの、最近なんです」 「ゲイか、俺はバイだ、女もいけるからな、けどよ、あんただってナニが使えりゃ女もいけるじゃねぇの、昔彼女がいたんだからな、だから俺とおんなじでバイだ」 杉本さんに言われ、そう言われたらそうだと思った。 「そうですね……」 俺もバイ・セクシャルになるんだろう。 「勃ったんなら、イク事もできるんじゃねぇか? ちょっとしこってみるわ」 「あ、はい……」 杉本さんは起立するナニを握って扱いていった。 けど、俺はやっぱりなんにも感じない、そこはちょい悲しかった。 それからしばらくの間、杉本さんは手を動かしてくれたが、勇姿を見せていたナニは徐々に萎えていった。 これじゃ無理だ。 結局イク事は出来なかった。 「上手くいったと思ったが……、やっぱそう簡単にゃいかねぇらしいな」 「そうみたいですね……」 わざわざやってくれたのに申し訳ない。 俺の息子はやっぱり役立たずだ。 「なあ操、イク事はできなくても勃ったんだ、繰り返しやりゃいずれイけるかもしれねぇ、それよりも……俺のをやってくれねーか? 手で構わねーからやってくれ」 杉本さんは励ましてくれて、今度は俺に頼んできた。 「はい、わかりました、上手くできるかな……」 男同士でやるのは何もかも初体験だが、他人のをシコるのも初めてだ。 イケなかったのは残念だけど、杉本さんは奇跡を起こしてくれた。 頑張ってやらなきゃバチが当たる。 「よーし、んじゃ、ちょい待て」 杉本さんはティシュを持ってきてテーブルに置くと、再び隣に座ってズボンの前を開いた。 なんの躊躇もなくナニを出したが、赤黒いソレはガチガチに起立して先端がカウパーで濡れている。 「あの……じゃあ、触っていいですか?」 「おー触れ、つか、触らなきゃできねーからな」 「はい、じゃあ……」 ひとこと断って竿を握ってみた。 「へえ……、こんな感じなんだ」 やけに熱く感じるし、握ったらビクッと脈打った。 やっぱり自分のと他人のじゃ感触が全然違う。 俺はゆっくりと扱いていった。 「へへっ、いいなー、これだからノンケは堪らねぇ」 「ノンケ……ですか」 「ああ、操はまだ未経験なんだ、だからノンケだ、ほら、俺ももういっぺんやってやるよ」 杉本さんは再び俺のを扱き始めたが、ほんと、感覚がないのが悔しい。 「勃起できるのにな、射精できねーんだな」 「そうなんです、というか勃ったのも凄く久しぶりだし、せっかくやって貰ってるのに、すみません」 「なに言ってる、いいじゃねーか、俺は気持ちいいぜ、そのー、口ならもっといいけどな、いくらなんでもそりゃできねーだろ?」 杉本さんは口でやって欲しいようだ。 こんなにして貰ってるんだし……やってみよう。 「あの、下手だと思いますが、やってみます」 「そうか? へへっ、じゃあ……頼むわ」 「わかりました、あの……ただ、俺は足で踏ん張れないので、倒れそうになったら支えてください」 「おお、わかった」 杉本さんの方へ屈み込み、片腕で体を支えてナニに顔を近づけた。 竿はビクッと脈打ってカウパーを垂らしたが、熱気みたいなものが唇に伝わってくる。 俺はこんな事初めてなのに、不思議と嫌悪感を感じなかった。 多分、杉本さんに好意を抱いてるからだ。 唇を先端にあててみたら、カウパーが唇を濡らした。 「おおー、くすぐってぇ、なははっ」 杉本さんは笑ったが、俺が恐る恐るやるから擽ったいらしい。 俺は初体験だから、心臓をバクバクさせながら舌で舐めてみた。 「うひょー! た、堪んねぇ」 杉本さんはやたらテンション高いが、思い切ってパクっと口の中に頬張ってみた。 「のあー! き、きたぁー、やっべ、やべぇぞ」 ちょっと……杉本さんがうるさ過ぎて笑える。 「ぷっ! あははっ!」 我慢出来ず、吹き出した。 「ははっ……、そうか、おもしれぇか、なあ、手で扱きながらやってくれ、その方がはえー」 笑っていたら注文がきたので笑ってる場合じゃない。 真面目にやらなきゃ。 言われたように手で扱きながら先端を舐めたら、杉本さんは乳首を弄ってきたが、無感覚なナニとは違ってそっちは敏感だ。 エロい気分が高まり、溢れ出すカウパーを夢中で舐め取った。 「おっ、出るぞ……、離れろ」 「はい……」 俺が起き上がると、杉本さんはティシュを取って俺の肩を抱いた。 「こっちぃ向け」 言われるままに顔を向けたら、がっつくようにキスをしてくる。 「んっ……」 倒れそうになり、杉本さんの体に掴まった。 杉本さんはキスしながらいったらしく、息を乱して唇を吸ってくる。 「ふっ……、なんかかっこ悪ぃな」 すっと顔が離れ、杉本さんは照れ臭そうに呟いた。 用意したティッシュをナニにあてがっているが、そういうところを見られるのは、いくら百戦錬磨でも恥ずかしいみたいだ。 「そんな……イけるのが羨ましい」 でも俺は……射精できるのが羨ましかった。 「そうか……、へへっ、ま、とにかくだな、とりあえずしまってだな……、穿かせてやるよ」 杉本さんはナニを拭いてズボンにしまい込むと、俺の服を掴み取り、元通りに服を着せてくれた。 今日は排泄で世話になった上に、たった今未知の体験をした。 杉本さんとそういう事をしたという事実をどう捉えたらいいんだろう。 そもそも俺は小川さんが好きなのに、杉本さんとこんな事をしていいのか? 気持ちの整理がつかなかったが、そろそろ鍼灸院に行かなきゃならない。 「あのー、俺、昼から鍼治療なんで、そろそろ……」 「ああ、そうだったな、だったらよ、これからなんか食いに行こう、昼を食ってねーし、腹が減っただろう、鍼灸院はそれから行きゃあいい」 「あ、そうですね」 食事の事をすっかり忘れていたが、確かに何か食べて行った方がよさそうだ。 杉本さんと一緒にマンションの部屋を出る事になった。 ◇◇◇ いざ出発となり、2台で駐車場を出たが、また杉本さんに先導して貰った。 俺はハンドルを握りながら、杉本さんとの事を改めて考えていた。 杉本さんがバイだったのは驚いたが、じゃあ小川さんの事はどうするんだ? 好きな人がいるのにあんな事をしてしまい、まるで浮気でもしたような気持ちになったが、小川さんとは……現在あの調子だ。 それに、小川さんもバイだとは限らない。 俺はやっぱり小川さんが好きだと感じるが、それは俺の片思いだ。 だったら杉本さんと付き合っても構わないだろう。 ただ杉本さんは俺との事をどう思ってるのか……。 軽いノリで誘ってきたし、単なる遊びかもしれない。 だとしても、俺は杉本さんも好きだ。 ひと通り考えても答えが出なかったので、先の事は……成り行きに任せる事にした。
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