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幻鳥〜キア
「あぁ~果物をもらえたのは嬉しかったけど、思わぬ出費だぁー!」
「イイネ!」
「良くない! ……まあでも、銅貨1枚でこの時期、贅沢品の果物6つもなんて、とても手に入らないよね」
後ろを振り返ることなく、縦揺れを感じ取るイリス。
「うん、そうだよね。他での買い出しを値切るの、頑張るよ」と呟きながら、イリスは財布の紐と気を引き締め、市場へと突撃していった。
「うわぁ~、大漁ならぬ、大量ー! 何、このおまけ度。 ハル、大活躍だったね!」
両手共に荷物でいっぱいだが、イリスの心は軽い。
背負袋の上のハルは、イリス同様超ご機嫌。喉の奥でグルグル声を出しながら、ヒョイとイリスの肩に乗り、頭を頬にスリスリと甘えてくる。
「ホント、お手柄だったよ、ハル! 知らなかったけど、王都に近いこの辺りでは、キアは縁起物なんだって。やったね!」
手放しの賛辞にハルは尻尾も上下にピコピコさせる。そこへ、キィーアァーと鳴きながら、ファサッと2羽の幻鳥が舞い降りてきた。
黒眼は幻獣の証――幻鳥もソレに含まれる。濃い緑がかった羽毛に覆われた2羽は、風切り羽に黄色が混ざったものは木の実を咥え、羽毛に黒が混じったものは子兎を対趾足でしっかりと掴んでいた。
「ピュイ、アイ、おかえり!」
イリスが明るく声をかけると2羽は、
「イー、ニ!」
「ドウゾ!」と捧げるように持って来たものを頭で押して寄越す。
「アイ、やったーお肉! ピュイも木の実は、保存食になるね! ありがと〜」
それから、イリスは手早く野営地を、王都の門に最も近いこの森の中に、設置した。もちろん、その間にアイの獲物も解体済みだ。
「ふぅー、これで王立学校の入学試験までの5日間、何とかここでしのげるかな……」
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