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森の中の出会い
ハアハアと息を切らしながら、イリスは森の斜面を登っていた。
雨も風もだんだんと強くなってきている。
イリスはもうびしょ濡れで、寒さで震えながらもなお、見通しの悪い中、薬草を探していた。
ない、どこにもない。
イリスの頭の中にある薬草は、どんなに探しても見つからなかった。
不安と悲しみと疲労から、幼いイリスの瞳に涙が浮かぶ。
やがて、イリスは偶然見つけた樹のうろの中で、小さく丸まりながら、声を上げて泣いた。
泣いて泣いて、どれくらいの時が経ったのだろうか。
ふと気がつけば、雨音が止んでいる。そして、うろの中にも日の光が差し込んできた。
恐る恐るイリスが外へ出てみると、空はいつの間にか青空へ。
そして、目の前には虹が広がっている。しかも、滅多にないという、二重の虹が――!
「イリスの生まれた時にはね、それはそれは綺麗な虹がかかったのよ」
嬉しそうに何度もそう話してくれた、母の声が思い出される。
「かあさまー!」
こみ上げてきた感情のままに叫ぶと、何処からかキィーアァーと応えがあった。
ファサッという軽快な羽音と共に頭の一部が白い幻鳥が舞い降りる。
イリスは目をまん丸にして、「きあ?」と呟き、そちらへ向かって一歩を踏み出す。
キアは一定の距離を保ちながら、正に虹の方へとイリスを誘導していく。
夢中になって、追いかけるイリス。
そして、ついにイリスはあんなに欲していた、薬草群に辿り着いた。
直ぐには信じられず、半ば呆然とするイリスの頭上をキアはゆっくり一巡し、甲高く一声鳴いて去って行った。
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