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薬師見習いとイリスの興味
キアとの出会いにより、薬草を手に入れられたイリスは、母アイラを救うことが出来た。
アイラは虚脱状態から抜け出すことが出来、徐々に母娘の生活も安定してくる。
それから、イリスは薬草群の情報と交換に、森の民の変わり者と名高い薬師シダの薬師見習いとなる事に――
一族から異端とされる紅い髪をまとめてローブに隠し、シダからイリスは文字や薬学、自然科学等様々なことを学ぶ。
知らないことを学ぶのは、面白い。
イリスは父方の血筋か、元々好奇心旺盛な質だ。
物覚えもすこぶる良い。
そして、母アイラを失いそうになった危機感もあり、鬼気迫る勢いで知識を蓄えていく。
ある時、イリスが目を輝かせて学び、様々な事に取り組んでいくうちに、ひょんなことから父の遺品である魔工具を起動させてしまった。
それは、血統限定のある収納袋で、血の繋がりのあるイリスしか扱うことはできない。
収納袋の中は、イリスにとって宝の山だった。
顔も知らない父が身近に感じられることもだが、父リストが集めた蔵書や資料、野外活動を支える魔工具等が中にはギッシリ詰まっていた。
イリスは時を忘れるほど熱中しながら、それらを読み、試行錯誤を繰り返す。
けれども、それらは森の民にとっては異端の知識。
そもそも、半分異端の血をひくとされるイリスは、森の民の掟に、生きているだけで違反しているようなもの。
紅い髪を隠すのでさえも、あるがまま、自然に生きているとは言えないのでは……? と最近は色んなことに疑問や矛盾を感じてしまう。
イリスの興味が尽きない、父の遺品から得た知識は、森の民には異端とされている。
けれども、イリスは異端を排除するばかりが良いとは、どうしても思えない。
収納袋の中には、役に立つ素晴らしいものが沢山あった。
知らないものをなぜ全て拒絶するのか。
森の民の知識にも、素晴らしいものは沢山ある。
どちらが良い悪いの判断は、両方を知ってからではダメなのか。
イリスの悩みは、尽きなかった。
そして、薬師見習いとして一族の居場所が出来つつも、その分ジワリと一族のしきたりに縛られ、イリスはだんだん息が詰まるような感覚に囚われることが多くなってきた。
そんな時はいつも、イリスは森へ飛び出す。
森での友達、あの時のキアに会いに行くのだ。
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