660人が本棚に入れています
本棚に追加
「酷暑っていうか。ここ近年の日本の夏の暑さは、異常だよね。ぼくが小さい頃は、部屋にクーラーとかなかったから、扇風機であーって声出してしのいだもんだけど。いま考えると信じられない話だよね」
「七條圭一を問い詰めればあなたの正体は判明する」
ゆっくりと。ペットボトルを持ち上げて口をつけ、見せつけるように喉を鳴らして飲んでから、あなたのことを見据える。瞳。肌の質感。全部全部、記憶してやる。
目を合わせると頬を緩め、
「……けど。そんなダサいことはしたくはない」
「なら、どうする?」
不敵に笑ったあなた。そんなにも自信があるのか。……なら、近くにいる可能性が高い。やはり、社内か。
ゆっくりと立ち上がったあなたは、あたしに背を向けて伸びをする。真夏の射光を浴びたあなたのシルエットが黒く染まる。
「七條家とつながりがあるのは確かだけれど。もし、あなたが七條の人間だったらそんな分かりやすい行動はとらない」言って、七條くんの言葉を思い出した。彼が、面接の場で神崎課長に言った台詞を。「……嫉妬。そう、七條くんには嫉妬している人間がいる。
それは、あなた」
Kの動きが止まる。
最初のコメントを投稿しよう!